(環境用水が作り出す都市景観)

 近年の経済社会の変化や国民生活の向上に伴い、河川水に対するニーズが多様化する傾向が見られる。例えばうるおいのある都市の水辺空間を作り出すことや、動植物の生態系を確保すること、河川水質等の河川環境を向上させることなどが新しいタイプのものとしてあげられる。このような環境用水の確保を図るためには、河川管理者や地域住民、河川水の利用者等が水系全体の状況を認識しつつ協議することなどを通じて、地域のためにはどのような河川環境や水利用が必要であるのか、という課題に対して共通の認識を持ち、各主体において地域の特性を反映させるために努力していく必要がある。
〈クリークに環境用水を〉
 佐賀市は、一級河川嘉瀬川から取水する農業用水等を利用してクリークと呼ばれる水路網を巡らせることにより発展した城下町であり、市民団体の活動として、夏休みに子供達が水遊びができるようにしたり、1年に2回清掃を行うなど、市民による保全と利用がなされていた。しかし、戦後の土地改良事業により農業用水の効率的利用のために幹線水路が市内をバイパスする形に変わったことや、嘉瀬川から市内を流れる一級河川多布施川を分流する施設(石井樋)の機能が災害によって失われたことなど、この水路網をめぐる状況には大きな変化がみられた。さらに生活雑排水等の流入等も影響して、近年、多布施川やクリークの水量不足や水質悪化が問題となっていた。そこで、水量復活を求める市民の要望を踏まえ、建設省は、建設中の嘉瀬川ダムとその上流の既設の北山ダム(かんがい・発電目的)との連携による対応を含めて、既存の水利用に支障を生じさせることなく、クリーク等に導入する環境用水を確保する方法について、佐賀県や学識経験者の参画を得た研究会において幅広く検討するとともに、農林水産省、関係市町村、関係土地改良区等の参画を得た協議体制の構築に向けて取り組んでいる。

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