(まとめ)

 「美しい景観のまち」は人々の生活に快適さ、豊かさ、ゆとりを与えるだけでなく、美しい景観に魅了された国内外の人々を引き付け、まちに活気を呼び起こすことにより、まちの地域間競争のみならず国際競争力の源泉となるソフトパワーを持つ。これは歴史的・文化的景観に恵まれたまちに限ることではない。
 景観は国土を基盤として、自然と人間の営為との合作による環境の眺めである、とされる。「美しい景観のまち」をつくることは、成熟した都市型社会に定住する様々な世代の住民が、それぞれの地域で歴史的に積み重ねられてきた「伝統・文化」も学びつつ、新たなまちのニーズや魅力を発掘するため、人と自然と人工構造物(住宅・建築物、公共施設)から成る「環境」との関わりについて、景観という可視的な視点に立って、みんなで参加し時間をかけて知恵を出し学びあう価値のあるテーマであると考えるからである。具体的には、住民が自分の地域の眺めに目を向け、行政によるあるいは自らまちづくりに主体的に参加・協力しながら、コミュニティの構成員としての自覚を持って、まちのビジョンづくりから自分の家づくりなどの各段階を通じて、ゆとりやうるおいのある住み良いまちを創っていこうとする際のテーマとして「美しい景観のまち」を取り上げることからコミュニケーションが生まれる。そして長期的に、地域社会の合意形成や、世代を継承する持続可能な社会づくりに役立つ地域も多いと思われる。
 このように、景観をテーマとしてまちづくりに住民が「参加」し、議論を尽くしてコンセンサスを得た上で、行政と住民が各施策を統合してそれぞれの役割を実践(統合化・総合化)していく「造景」の仕組みづくりこそが、環境と共生した美しい景観のみならず、地域の文化や個性を生み育てる住民の誇りや愛着、地域への一体感(アイデンティティ)や公共心などを醸成させ、魅力ある地域社会(コミュニティ)を再生する原動力になると期待している。