(4)持家取得の促進

イ 住宅金融公庫融資
 住宅金融公庫融資は、長期・固定・低利の住宅資金の貸付けにより、良質な住宅ストックの形成を誘導しつつ、居住水準の向上を推進している。
 また、居住水準の向上に資する設備・構造の普及、先導的な住宅の誘導、高齢者の生活しやすい住宅の誘導、地域に相応しいすまいづくりの誘導、住宅の省エネルギー対策等に資する設計、仕様を備えた住宅に対する誘導等を通じて、各種の住宅政策の実現手段となっている。
 さらに、近年では、公庫融資の積極化を通じて住宅投資を持続的に喚起するなど経済対策の柱の一つとして、大きく貢献しているところである。具体的には、「住宅金融公庫等の融資に関し緊急に講ずべき対策について(平成10年10月23日閣議決定)」に基づき、
1)貸付金利を引き下げる(2.55%→2.0%)とともに、2.0%を貸付金利の下限とする。
2)平成11年度末までの間、基準金利等が適用される融資額を大幅に増額する(生活空間倍増緊急融資、三大都市圏の75m2超の分譲マンションの場合、1,000万円/戸)。
3)政策誘導型リフォームの融資額を大幅に引き上げる(通常530万円→1,000万円)。
4)中古住宅融資の築後経過年数要件を緩和する(耐火構造の場合、築後20年以内→築後25年以内)。
5)平成11年度末までの間、勤務先の倒産等により、公庫融資に係る返済が困難な者に対し、必要に応じ、償還期間の延長(最長10年)、3年間の据置期間の設定、据置期間中の金利の引下げ等の措置を講じる(住宅ローン返済困難者対策)。
等の制度拡充を行うとともに、経済新生対策(平成11年11月11日経済対策関係閣僚会議決定)に基づき、平成11年度末までの措置とされていた生活空間倍増緊急融資、特別割増融資の臨時的増額、住宅ローン返済困難者対策等の適用期間を平成12年度末まで延長したところである。
 平成12年度の住宅金融公庫予算については、貸付戸数55万戸を確保するとともに、以下の貸付対象の拡大及び貸付条件の改善等を行った。
1)新築住宅の融資について、一定の耐久性を要件化するとともに、構造区分にかかわらず、償還期間を35年に一本化する。併せて、完済時の年齢を考慮した償還期間(原則80歳までに完済)を設定するとともに、ゆとり償還制度を廃止する。
2)中古住宅に対する融資を充実し、一定の規格に適合する新築並みの中古住宅について、新築住宅と同様の融資を行う。
3)中古住宅の購入と一定の良質な住宅(バリアフリー住宅、省エネ住宅)へのリフォームを併せて行う場合の融資の優遇制度(リフォーム融資の償還期間の延長など)を創設する。
4)住宅分野における環境対策を推進するため、一定の耐久性等を要件化するとともに、建設廃棄物のリサイクル資材や二酸化炭素の貯蔵に寄与する資材(木材)の活用により、環境負荷の低減に資する住宅整備に対し、融資の優遇を行う。
5)頭金の確保を奨励し、住宅の計画的取得を支援する住宅債券制度(つみたてくん)の対象者、対象地域の全国拡大等の拡充を行う。
6)マンションの計画的な大規模修繕を支援するため、住宅債券制度を拡充し、マンションの修繕積立金について、公庫が受け入れる制度を創設する。
7)住宅市街地における居住環境の改善を促進するため、住宅及び生活関連施設等の計画的な共同・協調建替え等に対し、融資の優遇を行う「都市居住再生融資制度」を創設する。
8)政府からの借入を補完する資金調達手段として、公庫の住宅ローン債権の証券化(資産担保証券の発行)及び政府保証債の発行を行う。
ロ 公社分譲住宅等
 地方住宅供給公社等の建設する分譲住宅については、11年度は10,000戸の建設を計画し、その建設を推進した。平成12年度においても8,000戸の建設を計画している。
 また、地方住宅供給公社等が供給する特定の分譲住宅の購入資金について、住宅金融公庫等の融資と地方公共団体の援助との連携により購入者の負担の軽減を行い、持家取得の円滑化を図る地域優良分譲住宅の供給を行うこととしている。
ハ 民間住宅金融等
1) 民間住宅金融
 民間金融機関による平成11年(1月〜12月)における住宅ローン新規実行額は、全国銀行で前年比1.25%減の約12兆5,000億円と前年水準を下回ったものの、平成11年12月末現在の貸出残高は、前年同期比7.76%増の約67兆4,000億円に達している。
 民間住宅ローン金利は、住宅ローンの商品性及び金利の自由化が図られ、変動金利型ローンについては、その金利決定方式が短期プライムレート基準に変更され、固定金利型ローンについても、従来型(長プラ基準)のものに替わり各金融機関ごとに2年から10年の期間で金利を選択できる商品(固定金利選択型)が主流になっている。
 また、金利以外の商品内容についても、金融機関ごとに品揃えも豊富となり、今後もさらなる金融機関相互の競争を通じて、利用者のニーズに即した商品性の多様化が図られるものと思われる。
2) 住宅融資保険事業
 住宅金融公庫においては、民間金融機関の住宅ローンの供給を促進するため、住宅ローンの回収不能額の9割を保険する住宅融資保険事業を行っているが、民間金融機関におけるリスク管理が強化されるなか、住宅融資保険に対する需要は増加している。このような需要に対応するため、平成12年度においても、前年度に引き続き、保険価額の総額の限度額1兆円を確保し、民間住宅ローンの信用補完事業を推進しているところである。
3) 地方公共団体における住宅融資制度
 地方公共団体においては、地域の住民を対象とした独自の住宅融資制度を実施している。これらは一般的な持家取得資金融資のほか、母子家庭や老人同居家庭を対象とする福祉的色彩の濃いもの、中小企業勤労者向け等、各地域の特性を反映したものとなっている。
ニ 郊外型住宅等
 平成10年7月から施行された「優良田園住宅の建設の促進に関する法律」により、自然環境の保全と調和、農林漁業の健全な発展との調和などに配慮しつつ、農山村地域、都市の近郊等における優良な住宅の建設を促進する。