(5)良好な居住環境の整備の推進

イ 大都市圏の居住立地構造の改善
 大都市地域等においては、住宅立地の遠隔化により、通勤・通学時間が長時間化する反面、都心部においては人口減少と地域コミュニティの崩壊、産業構造の転換等による低・未利用地の発生が顕著になっている。このような状況の中、職住近接によるゆとりある生活を実現し、住宅・社会資本整備の効率化や省エネルギーの推進を図るため、都心部の低・未利用地を有効活用しつつ都心居住の推進、居住立地構造の改善に資する良好な住宅市街地の整備を推進する必要がある。このため、平成11年度に創設された大都市居住環境整備推進制度に基づく都市・居住環境整備重点地域において、国と地方公共団体が連携を図りつつ、住宅市街地整備関係事業制度の特例措置の適用と重点的実施、都市基盤整備公団の活用、民間事業者の参入促進等により、良好な住宅市街地の整備を集中的に推進することとしている。
ロ 住宅市街地の総合的な整備
 大都市地域等の既成市街地において、大規模な工場跡地、国公有地、老朽住宅団地等の大規模再開発を核として、市街地住宅の建設と公共施設の整備を総合的・一体的に行う住宅市街地整備総合支援事業などにより、住宅市街地の総合的な整備を推進してきている。平成12年度においては、中心市街地整備改善活性化法の基本計画の区域に係る事業の面積要件等の緩和などの制度拡充等を行い、三大都市圏の都心地域その他において重点的に事業の推進を図ることとしている。
ハ 住環境整備事業等
 住環境整備事業としては、不良住宅等の密集、公共公益施設の不足等により住環境が劣っている住宅地区において、不良住宅等の除却、公共施設・地区施設の整備等により良好な住宅地の形成を図る住宅地区改良事業等を実施してきたほか、地区施設の整備等によりゆとりとうるおいのある住宅地の形成を図る街なみ環境整備事業を実施してきたところである。これまでに全国で約1,850地区の整備を行い、従前居住者用住宅である改良住宅等を約17万7,000戸建設しており、平成11年度には、全国の約100地区で事業を実施した。
 平成12年度においても、住宅地区改良事業等による住環境整備を推進するとともに、地域改善対策特定事業の早期完了を図ることとしている。
ニ 民間活力の活用等による市街地住宅の供給
 市街地再開発事業・市街地住宅総合設計制度の活用
 民間建築活動の誘導により、良好な市街地住宅の供給を促進するため、市街地住宅の供給に資する良好なプロジェクトに対して、容積率の一層の割増し等を行う市街地住宅総合設計制度を活用し、平成10年3月末までに約86,500戸の住宅を供給してきている。さらに、住宅地高度利用地区計画制度、用途別容積型地区計画制度の活用を図っている。
 市街地再開発事業及び優良建築物等整備事業においては、従来から住宅が一定割合以上のプロジェクトに対して、補助の優遇を行う等の配慮を行い、市街地住宅の供給を積極的に推進しているところである。
ホ 密集住宅市街地の整備
 密集住宅市街地整備促進事業について、事業実施地区をはじめとして、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に基づく防災再開発促進地区の指定を進め、同法に基づく耐火建築物等への建替え等の推進を図るとともに、補助制度についても所要の拡充を行い、密集住宅市街地の早急かつ着実な整備を推進している。平成12年度においては、防災再開発促進地区における事業面積要件の撤廃等の制度拡充を行い、全国の約170地区、約6,500haにおいて事業を推進することとしている。
ヘ 公団による居住環境整備の推進
 都市基盤整備公団は、地方公共団体や民間では十分な整備が期待されない、大都市地域等における市街地の整備改善(既成市街地の再開発、住宅市街地の整備)、政策的に特に必要とされる賃貸住宅の供給・管理等を通じて、総合的な居住環境の整備を推進する。
 平成12年度においては、「都市・居住環境整備推進出資金(居住環境整備型)」を活用し、大規模な土地利用転換による住宅市街地の整備を行う等、総合的な居住環境整備を推進する。