(5)参加と連携による地域と河川の関係の再構築

 近年、貴重な水と緑の空間として人々にうるおいを与えるという河川の役割が再評価され、地域と河川の関係を取り戻そうとする機運が高まりつつあり、参加と連携により地域と河川の密接な関係を再構築していくことが必要である。
イ 地域の意向を反映した川づくり
 地域のニーズに的確に応え、河川の特性を活かした個性ある川づくりを実現するには、計画段階から地域との連携が不可欠である。このため、河川法改正により、河川整備計画策定に地域住民、地方公共団体の長等の意見を反映する手続きを導入した。一級水系においては、平成11年12月1日に留萌川水系等6水系の河川整備基本方針を策定し、現在、河川整備計画の策定手続きを進めている。二級水系においては、平成12年3月末現在で上津浦川水系等9水系の河川整備基本方針が策定されるとともに、上津浦川及び気仙川の河川整備計画が策定されている。
ロ 河川管理への市町村参画の拡充
 まちづくりや地域づくりの主体であるとともに住民に最も身近な地方公共団体である市町村が河川管理に積極的に参画することが求められていることから、河川審議会において、平成11年12月以降4回にわたり管理部会で審議し、平成12年1月21日に「河川管理への市町村参画の拡充方策について」答申をした。概要は以下のとおり。
・市町村工事制度の一級河川の直轄管理区間への拡大
・都市基盤河川改修事業の事業主体となる市町村の拡大
・指定都市に都道府県と同様の河川管理権限を付与
 この答申を受け、河川管理への市町村参画を内容とする「河川法の一部を改正する法律」が平成12年4月28日公布された。概要は以下のとおり。
・市町村工事制度の拡大
一級河川の直轄管理区間で市町村の発意により河川管理者と協議して、河川工事を行うことができるようにする(第16条の3の改正)。
・政令指定都市への河川管理権限の委譲
指定都市の区域内の一級河川の都道府県管理区間及び二級河川のうち建設大臣又は都道府県知事が指定した区間について、指定都市に河川管理権限を付与する(第9条及び第10条の改正)。
ハ 流域における市民団体等との連携活動の強化
 地域が一体となった効果的な災害対応や、各地域の状況を踏まえたきめ細かな河川環境の保全など、市民団体等の活動と一緒になった取組みにより、よりよい川づくりを行うことができる場合が多々あるのではないかと考えられるため、河川に関するどのような側面において、どのような内容で市民団体等と一緒になった取組みを進めていけばよいかということに関して検討し、具体的に実現するべく、河川審議会において「河川における市民団体等との連携方策のあり方について」審議がなされており、
・市民団体等に期待する社会的役割
・市民団体等との連携を進めるべき分野
・市民団体等と行政との連携を効果的に進めるための仕組みや支援策、体制づくり等の具体方策
等が検討項目としてあがっているところである(写真2-VIII-3)。
ニ 地域との関係再構築に向けた情報化の推進
 平成11年8月には、地域の独自性を活かした地域と河川の関係の再構築を図るため、住民が河川を自分たちのものとして考え、主体的に行動するとともに、河川管理者と共同して河川に関する活動を展開する姿を目指し、i)環境、歴史・文化に関する情報の充実、ii)画像情報や体験型の情報提供による河川に対する住民の関心の喚起、iii)地域の住民が主体的に河川に関わるための支援について施策を展開する必要があるという内容の河川審議会答申が出された。
ホ まちづくりと連携した都市内河川整備の推進
 これまで、まちづくりに河川が活かされることが少なく、また、まちづくりとは独立して治水機能のみが重視された河川の整備が数多く進められてきた。この様な状況を踏まえ、今後は都市内の河川を都市の重要な構成要素としてとらえ、地元地方公共団体のマスタープラン等に河川の構想や計画を位置付けるとともに、河川の持つ防災機能や環境機能等を活かした良好な河川及び沿川地域の整備を推進し、都市の安全性・防災性の向上、都市環境の向上を図る。
ヘ 「川に学ぶ」社会の実践に向けて
 川を活かした環境教育について検討を行うため、平成9年8月に河川審議会に「川に学ぶ」小委員会を設置し検討を進め、平成10年7月に報告を取りまとめた。その報告では、「人々の関心を高める魅力ある川づくり」「川に関わる広範な知識・情報の提供」「川に学ぶ機会の提供」「川に学ぶ社会に向けて必要とされる主体的・継続的活動」等が必要とされている。
 この報告を受けて、平成10年9月に「川に学ぶ」研究会を設置し、実践に向けた具体的方向を打ち出すよう検討を進めるとともに、研究会における検討に反映させるため、一般市民や川をフィールドとする市民団体等の支援・協力を得ながら、「川に学ぶ」シンポジウムなど公開型の実践的な取組みを行っている。
ト 「河川レンジャー」制度
 きめ細かい川づくり、川を活かした地域づくりを行うためには、市民・関係地方公共団体・河川管理者等の各主体が適切な役割分担に基づいた河川管理を推進することが必要であるため、各主体間のパートナーシップを支えるとともに、河川の日常的な環境モニタリング、河川利用者への窓口等を行う専門家「河川レンジャー」制度のあり方について検討を進めている。
チ 河川の自然性を踏まえた適正かつ安全な河川利用に向けて
 平成11年8月に発生した神奈川県山北町の玄倉川におけるキャンプ客の水難事故に代表されるように、近年、河川におけるアウトドア活動中の事故が増加している。
 こうした河川利用上の事故を未然に回避するために、河川管理と河川利用の双方の観点から、河川利用者の自己責任のあり方や河川の自然性を踏まえた適正な河川利用、出水時等における安全確保のあり方について検討を進めている。
リ 福祉の川づくりの推進
 市街地における貴重な水と緑のオープンスペースである河川空間を活用し、自然にふれあいながら健康増進が出来る福祉空間を整備するため、堤防に緩やかなスロープや手すり等を設置するほか、車椅子での利用の体験会等を開催することにより、全ての人が親しみやすい川づくりを推進する。
ヌ 新たな海岸保全の計画制度等の推進
 海岸法の改正によって、国が今後の海岸保全の基本理念を示す「海岸保全基本方針」を策定することとなった。策定にあたっては、学識経験者等の意見を聴くため開催した「今後の海岸のあり方検討委員会」から提言を受けた。これを踏まえ、平成12年5月16日、建設大臣を含む三大臣が共同で海岸保全基本方針を策定、公表した。さらに、方針に基づき、都道府県が住民の意見等を反映した海岸保全に関する基本的な事項を定める「海岸保全基本計画」を作成することとしている。
 占用許可等日常的な管理について地域の積極的な参画が望まれることから都道府県に代わりより地域に密着した行政主体である市町村が行える制度を創設した。


C2801501.gif