(3)不動産業の活動

 不動産業は、その業態が大きく開発・分譲、流通、賃貸、管理の4つに分類され、その業務は極めて多岐にわたっている。
イ 開発・分譲部門
 開発・分譲部門は、かつてバブル期において価格の高騰、開発適地の減少による素地取得難、開発コストの上昇等による事業採算性の悪化等の問題が指摘されていたが、地価の下落が続く今日において、低価格帯への需要の偏在、オフィス需要の回復の遅れ等から依然厳しい環境下にある。
 平成3年度以来、宅地供給量は若干減少傾向にあり、平成10年度の民間宅地供給量は、7,100haとなっている。分譲住宅着工戸数は、昭和61年度から平成2年度まで急増し、平成3・4年度は、地価の先安感もあって減少に転じた。平成5・6年度は、割安感・底入感から再び増加に転じ、平成7年度は一旦減少したが、平成8年度はわずかながら増加した。しかしながら平成9・10年度は、不況の影響を受けて減少した。ただし最近は明るい兆しもみられる。なお、マンションの分譲戸数については、昭和56年度以降、一戸建ての分譲戸数を上回っており、地価の比較的高い都市部を中心に、快適な生活を享受できる合理的な居住形態として、国民の間に定着してきたことがうかがえる(図3-III-1)。
 また、最近では、開発物件に高度な管理サービスなど様々な価値を付加して供給する形態も見受けられる。
ロ 流通部門
 不動産流通部門については、バブル崩壊後の地価の下落等により、住宅の評価損が発生したため、住み替えができなくなるなど買い換え需要が減退するとともに、景気の低迷等により土地取引が減少傾向にあるなど厳しい状況にあったが、最近は景気の緩やかな改善とともに状況は回復しつつある。さらに、国民のライフスタイルや企業の活動形態の変化、新築住宅に必ずしも固執しないという消費者のニーズの変化、住宅・オフィスビルのストックの増大等を背景として、流通部門の重要性は依然大きい。特に、賃貸借の媒介の分野において、中古住宅やオフィスビルの流通のみならず、賃貸住宅ストック等の増加を反映し一層の成長が見込まれている。
 また、平成9年4月より新しい指定流通機構制度が発足するなど、不動産流通市場の近代化等が進んでおり、取引関係の透明化・公正化が一層進むことが期待されている。
ハ 賃貸部門
 バブル崩壊以降の長期の景気の低迷等により、特に東京23区内のオフィスビル空室率は、平成3年度以降上昇し、平成6年度下期から減少傾向に転じたものの、平成10年度上期から再び上昇傾向になり、賃料も弱含んでいる。需要は近・新・大の物件に集中し市場が二極化の方向に進んでいる。
 賃貸住宅については、老朽家屋の建て替えも含め、平成8年度に貸家着工戸数が一旦増加したものの、全体として減少傾向にある。
ニ 管理部門
 分譲マンションストックは、平成11年度末には約369万戸を超えるものと推計され(図3-III-2)、今後も、職住近接や生活の利便性を求める消費者のニーズに対応して着実な新規供給が見込まれている。建設大臣登録の管理業者が管理を受託している戸数は、平成11年度末には約298万戸に達しており、今後も、マンションストックの増加とともに、マンション管理の受託業務は一層活発化し、その重要性が増大していくものと考えられる。
 また、ビルについても、健全なビル管理のためのメンテナンス業の必要性が高まるとともに、テナントの要求に応え得るビルマネジメント業務の重要性がますます増大していくものと考えられる。

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