(2)不動産業の特性とそれを取り巻く状況

イ 不動産業の特性
 不動産業を他産業と比較すると、1)自己資本比率が低い(-8.4%、全産業平均は19.2%、平成10年度大蔵省「法人企業統計」)、2)中小零細性が著しい(従業者5人未満の事務所が87%、全産業平均は62%、平成8年総務庁統計局「事業所統計調査報告」)、3)参入・退出率が高い(平成11年度新規免許取得率4.4%、廃業率3.7%、建設省調べ)、4)従業者1人当たりの付加価値額が極めて高い(1,482万円、全産業平均712万円、平成10年度大蔵省「法人企業統計」)等の特性を有している。自己資本比率が低いのは、業務の性格上、素地取得等に多額の資金を要し、かつ、事業期間が長期間に及ぶため借入金依存度が他産業と比較して高いことに加え、特に近年は地価の下落の長期化など不動産業を取り巻く諸情勢が厳しいことなどの理由によると考えられる。
ロ 不動産業を取り巻く状況
 住宅市場においては、新築分譲マンション(首都圏)の売行きは平成8年秋から低調に推移していたが、住宅対策等により平成10年秋頃からは供給戸数が対前年同月比で増加傾向が続いている。オフィス市場においては、改善傾向にあった空室率は企業のリストラの進行等により再び上昇傾向が見受けられ、賃料も弱含んでいるとともに、新・近・大の物件に需要が集中し、市場が二極化している。
 借入金依存度の高い不動産業界では、低金利等により平成9年前半まで倒産が減少傾向にあったが、平成9年後半以降は長引く販売不振や金融機関の貸し渋り等の影響により対前年同月比で概ね増加傾向にある。また、業界全体の経常利益は、住宅の売行きの回復等に伴い平成10年度は8年ぶりにプラスに転じた。