(4)不動産取引市場の整備

 我が国の不動産取引市場は、近年のバブルの生成・崩壊の過程においてみられたようなその不透明性や閉鎖性を今なお十分には払拭しきれていない状況にある。こうした問題点を解決し、不動産取引市場を透明でオープンなものにするためには、不動産の売買等を依頼された業者が指定流通機構に物件情報を登録することにより、広く情報を流通させ最適な取引相手を見出すシステムを普及させる必要がある。
 このため、建設省では、次のような施策を総合的に推進し、公正で透明な不動産取引市場の形成と消費者保護の一層の増進を図っているところである。
イ 指定流通機構の活用の促進
 指定流通機構制度は、不動産取引市場の整備等を目的として、宅地建物取引業者が、建設大臣が指定する流通機構に物件情報を登録し、広く情報交換を行う仕組みであり、迅速かつ円滑な不動産取引等を促進するものである。
 指定流通機構の活用により、不動産取引市場に対して次のような効果が期待されている。
1) 迅速・広範・透明な取引
 多数の業者が情報を共有するため、迅速・広範な取引が可能となる。また、これにより透明な不動産取引市場が整備される。
2) 適正な価格形成
 成約報告等の取引事例の集積により、業者・消費者等が不動産取引市場の動向を把握することが可能となるほか、これを不動産市況情報として国民に提供すること等により、適正な価格形成が促進されるとともに、的確な経済運営に資する。
3) サービス競争の促進
 業者間の情報の共有化によりサービスの競争が促進され、業界全体のサービスの向上が図られる。
 平成9年4月には、先のバブルの経験を踏まえつつ不動産取引市場の一層の整備を図るため、宅地建物取引業法の一部改正が施行され、次の点について指定流通機構制度の強化が図られた。
1)従来の専属専任媒介契約に加え、専任媒介契約についても指定流通機構に登録しなければならないこととした。
2)指定流通機構の指定要件として公益法人であることが明確に定められるとともに、建設大臣が宅地建物取引業法に基づき所要の監督を行うこととした。
3)指定流通機構の公益業務として、不動産市況情報の国民への提供業務を追加した。
 現在、指定流通機構は、4つの公益法人で全国をカバーしている。平成12年3月末現在の会員業者数は約14万、登録されている物件情報の総数は約26万件である。また、平成11年度においては、新規登録件数は約123万件、成約報告件数は約83,000件に達している(表3-III-5)。
ロ 市場動向の機動的な把握と提供の充実
 公正・透明な不動産取引市場の実現を図るためには、不動産取引市場の動向を機動的に把握する必要があることから、不動産流通量、価格動向等の調査を行っている。また市場のひとつであるオフィスビル市場の実態については現在、民間の調査機関において調査しているものの、ビル事業の収益性に直結するデータの収集は不十分であり、事業の採算性や取引慣行が必ずしも明らかになっていない。そこで事業の収益性や取引慣行が不動産市場の動向に大きく影響するということに鑑み、面積、賃料、空室率といった基礎データを積極的に収集し、併せて取引慣行も調査、分析することにより、オフィスビル市場を的確かつ正確に把握することとしている。

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