第II部 国土交通行政の動向 

(3)船員対策

1)優秀な船員の確保・育成
 優秀な船員を安定的に確保することは、海事産業の発展のために不可欠な要素である。特に、船員の高齢化、燃料油高等厳しい経営環境下におかれている内航海運においては、自社の船舶において船員教育を行っていくことが厳しく、船員教育機関における新人船員の即戦力化が従来以上に求められている。そのため、船員教育機関である独立行政法人海技大学校、航海訓練所及び海員学校(海事3法人)では、社会のニーズを反映した教育課程の再編や柔軟な対応を図るなど、効果的・効率的な業務運営に努め、優秀な船員の育成を行っている。
 今般、海事3法人については、「平成17年度末までに中期目標期間が終了する独立行政法人の見直しについて」(平成16年12月行政改革推進本部決定)において、海技大学校と海員学校の統合、海事3法人役職員の非公務員化等を内容とする決定が出されたところであり、今後は、この決定の指摘を踏まえ、平成18年度次期中期目標期間において、一層の効率的かつ効果的な運営を図りつつ、船員養成の規模・体制を再編整理することとしている。

 
図表II-5-4-10 船員数の推移

船員数は、減少傾向にある。特に漁業船員数は、昭和55年の約11万4千人から平成16年には、約2万9千人にまで減少している。また、平成16年の内航船員数は、約3万1千人、外航船員数は、3008人である。
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2)船員雇用対策
 船員を取り巻く雇用情勢は、平成16年度の有効求人倍率が0.20倍と対前年度比0.09ポイントの増加となっており、本年に入ってからも有効求人倍率が上昇傾向にあるが、引き続き厳しい状況に変化はない。このため、全国の地方運輸局等において船員職業紹介、就職指導等を行っている。また、いわゆる離職四法(注1)に基づき、漁船の減船等により発生する離職船員に対して職業転換等給付金の支給も行っている。
 一方、船員の高齢化の進展に対応し、若年船員の雇用促進を図るため、(財)日本船員福利雇用促進センターが国と関係団体の協力の下に若年船員トライアル雇用助成事業を実施している。また、求人者と求職者を一同に集め、求職者に対する企業説明会や就職面接を集中的・効率的に行うためのイベント(船員就業フェア)を国が直接開催し、平成17年度には3回実施した。
 さらに、平成17年4月から、必要に応じて適正かつ円滑に企業間で船員の移動ができるようにするための船員派遣事業が制度化されるとともに、若年船員の確保を図るため、届出により学校等が無料の船員職業紹介事業を実施することが可能となった。

 
図表II-5-4-11 年齢別船員の構成

船員の職員の年齢構成は、50才台前半にピークがあり、全体の約30%を占めている。なお、職員には、船長、航海士、機関長、機関士、通信長、通信士、医師、事務長、事務員等が該当する。部員は、約22%を占める20才台後半と、約15%を占める50才台前半の、2つの年齢層にピークがある。なお、部員には、職員以外の乗組員が該当する。
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3)船員の労働環境整備の推進と乗組み体制の見直し
 航行の安全の確保及び船員の保護を図りつつ、海上運送事業の活性化を促進するため、平成17年4月より改正「船員法」が施行され、労使協定に基づく時間外労働を認めるとともに事後チェック強化等の措置を講じた。事後チェック強化策については、事業法(「海上運送法」、「内航海運業法」)と船員関係法(「船員法」、「船員職業安定法」、「船舶職員及び小型船舶操縦者法」)に関する監督権限を幅広く有する執行官として、「運航労務監理官」を各地方運輸局等に設置した。これに併せ、改正「船員法」の施行から半年間を内航貨物船の定員規制に係る集中監査期間とし、運航労務監理官による指導を強化しており、監査を通じて密接な指導を行っている。
 また、近年、産業構造・輸送環境の変化に対応して輸送コストの削減が強く要請されており、厳しい経営環境にあるなど、内航海運を取り巻く状況の変化に対応するため、船員の乗組み体制について、平成17年4月に限定近海に相当する区域(注2)に係る乗組み基準を新設し、内航船に係る乗組み基準を緩和した。


(注1)「漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法」、「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法」、「船員の雇用の促進に関する特別措置法」、「本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法」
(注2)北海道や九州等の長距離航路に対応できる日本周辺の限られた水域

 

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