第II部 国土交通行政の動向 

(2)都市環境インフラの再生

1)大都市圏における貴重な自然環境の保全・再生・創出
 自然環境の保全・再生・創出を総合的に考慮した水と緑のネットワークを形成するための基本方針となる「都市環境インフラのグランドデザイン」を、首都圏に続き、平成18年7月に近畿圏についても取りまとめた。
 平成18年度の主な取組みとして、首都圏では、グランドデザインの中で保全すべき自然環境の一つとして位置付けられた「円海山・北鎌倉近郊緑地保全区域」(横浜市、鎌倉市)を12月に拡大指定するとともに、他の地域でも新たな指定に向けた検討を進めている。また、近畿圏では、行政や市民団体からなるワーキンググループを3組設置し、地域の課題の抽出やその解決に向けた具体的な取組みの検討・整理等を行っている。
 
図表II-3-3-7 近畿圏の都市環境インフラの将来像図


2)臨海部における緑の拠点の形成
 都市再生プロジェクト第三次決定を受け、その先導的事例として、東京港中央防波堤内側における「海の森構想」、大阪湾堺臨海部における「共生の森構想」、大阪湾尼崎臨海部における「尼崎21世紀の森構想」の取組みが進められている。こうした臨海部の大規模緑地の整備は、廃棄物海面処分場跡地の有効活用、地球温暖化対策及びヒートアイランド対策、生態系の回復、環境学習の場や自然とのふれあいの場の拡大につながるものと期待されている。整備に当たっては、計画検討の段階から市民ボランティア、NPO等と行政との協働が図られている。

3)都市の緑の拡大
 ヒートアイランド現象の緩和、地球温暖化の防止、生物多様性の確保等を目的とした、良好な自然環境の保全と創出による緑豊かな都市環境の実現が求められている。このため、道路・河川・公園等の事業間連携により効率的・効果的に緑を生み出していく「緑の回廊構想」、都市公園の整備、特別緑地保全地区の指定等の多様な手法により都市の緑地を確保する緑地環境整備総合支援事業等を推進し、緑とオープンスペースの確保を図っている。
(ア)公園緑地の整備
 都市における自然再生、多様な生物の生息・生育基盤の確保等を行う自然再生緑地整備事業、クールアイランドや風の道の形成等都市環境を改善するため重点的な緑地の整備及び緑化を行う緑化重点地区整備事業等、公園緑地の整備を推進している。
(イ)都市緑化・緑地保全の総合的・計画的な推進
 市町村が策定する緑地の保全や緑化の推進に関する総合的・基本的な計画である「緑の基本計画」に基づき、建築行為等一定の行為の規制により樹林地等の保全を図る特別緑地保全地区の指定、建築敷地の緑化について固定資産税の軽減措置が受けられる緑化施設整備計画認定制度の活用等により、都市緑化・緑地保全を積極的に推進している。

4)河川の再生
 大都市における水循環の主軸である主要な河川について、河岸の再自然化、水質の改善、親水空間の整備等により、河川の再生を重点的に推進している。平成18年度においては、東京都心部の渋谷川、古川における環境の再生等を行っている。

5)海の再生
 東京湾等の閉鎖性海域では、環境改善のための取組みが行われてきたが、流入する窒素、りん等の汚濁物質により富栄養化が進み、赤潮や青潮(注1)が発生するなど、環境改善が思うように進んでいない状況にある。
 このため、都市再生プロジェクト第三次決定を受け、東京湾及び大阪湾においては、「東京湾再生のための行動計画」、「大阪湾再生行動計画」に基づき、関係機関と連携の下、陸域負荷削減対策(注2)、海域環境改善対策(注3)、モニタリング(注4)等の各種施策を推進している。さらに、伊勢湾、広島湾等の他の閉鎖性海域においても、「全国海の再生プロジェクト」として順次再生のための行動計画を策定し、閉鎖性海域の環境改善に向けた取組みを推進していく。


(注1)海底に堆積した植物プランクトンの死骸等が分解される時に大量の酸素が消費され、極端に酸素不足となった海水が風等で海面付近へ浮上した際に海水が青白く見える現象
(注2)水質総量規制制度に基づく事業場への規制等の実施、下水道の整備(高度処理の推進)、地域事情に応じた農業集落排水施設の整備、浄化槽等の各種生活排水処理施設の整備、河川直接浄化、湿地や河口干潟の再生、森林の整備・保全等の水質改善事業
(注3)干潟・藻場の再生・創出、汚泥の除去や覆砂による底質の改善、環境整備船等による浮遊ゴミ・油の回収等
(注4)水質測定、人工衛星を利用した赤潮等の常時監視と発生原因の推定等

 

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