第II部 国土交通行政の動向 

(2)多様な居住ニーズが実現される住宅市場の環境整備

1)住宅の品質確保の促進
 「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保法)」に基づき、新築住宅の基本構造部分に係る10年間の瑕疵担保責任を義務付けるとともに、新築住宅及び既存住宅に対し、耐震性、省エネ対策、シックハウス対策等、住宅の基本的な性能を客観的に評価し、表示する住宅性能表示制度を実施している。平成17年度の実績は、設計図書の段階で評価した設計住宅性能評価書の交付が195,294戸、施工段階と完成段階の検査を経て評価した建設住宅性能評価書(新築住宅が対象)の交付が118,399戸となっている。18年4月より防犯性能の評価・表示を開始するなど、評価内容の充実を図っている。
 建設住宅性能評価を受けた住宅(評価住宅)に係る紛争については、指定住宅紛争処理機関(弁護士会)が裁判によらず迅速かつ適正な処理を図ることとしており、住宅紛争処理支援センターがその支援業務を行っている。また、同センターは、住宅全般に関する様々な相談も受け付けている。平成17年度の実績は、指定住宅紛争処理機関における紛争処理の申請受付件数は32件(調停32件、あっせん0件)、住宅紛争処理支援センターの相談受付件数は11,373件となっている。

2)住宅金融
 住宅金融公庫は、国民の住宅取得を支援するため、長期・固定・低利の融資を公平かつ安定的に供給し、また、居住水準の向上や耐久性、省エネ性、バリアフリー化等良質な住宅ストックの形成の上でも一定の役割を果たしてきた。
 特殊法人改革の一環として、平成15年10月より民間金融機関による長期・固定金利の住宅ローンの供給を支援する買取型の証券化支援事業を開始し、18年12月末までの実績は買取申請戸数125,663戸、買取戸数83,874戸となっており、317の金融機関が参加している。対象となる住宅については、耐久性等の技術基準を定め、物件検査を行うことにより住宅の質の確保を図るとともに、17年度には床面積上限の廃止等制度改善を行った。また、同年度から省エネ等の性能が特に高い住宅に対し、金利優遇を行う優良住宅取得支援制度を実施している。さらに、16年10月からは公庫の住宅融資保険がかけられた長期・固定金利の住宅ローンを担保として、民間金融機関が発行する債券等に対し公庫が元利払い保証を行う保証型の証券化支援事業を開始している。
 こうした状況の中、特殊法人等整理合理化計画等に基づき公庫を廃止し、平成19年4月には、証券化支援業務を主業務とする「独立行政法人住宅金融支援機構」が設立されることとなっている。なお、同機構の融資業務は、民間では対応が困難な災害関連、密集市街地建替、子育て世帯・高齢世帯向け賃貸住宅等に限定することとなっている。
 
図表II-4-4-3 証券化支援事業(買取型)スキーム図

住宅金融公庫が行う証券化支援業務には、民間金融機関が貸し出した長期・固定金利の住宅ローンについて、公庫がこれを買い取り、信託した上で債券の発行を行う買い取り型等がある。

3)住宅税制の充実
(ア)税源移譲に対応して住宅ローン減税の効果を確保するための控除額の特例の創設
 三位一体改革の一環として行われる税源移譲により住宅ローン減税の控除額が減少する場合があるが、住宅ローン減税の効果を確保するため、平成19年度税制改正において、19年又は20年の入居者を対象として、住宅ローン控除制度の控除期間及び控除率の特例を創設することとしている。なお、この特例は現行制度との選択としている。
(イ)住宅のバリアフリー改修促進税制の創設
 高齢者等が安心して快適に自立した生活を送ることのできる環境の整備を促進し、高齢者等の居住の安定の早期確保を図るため、平成19年度税制改正において、高齢者等が住宅についての一定のバリアフリー改修工事(注1)を行った場合には、所得税や固定資産税を軽減する特例措置(注2)を講ずることとしている。

4)既存住宅流通市場の環境整備
 既存ストックが有効活用されるためには、質の高い既存住宅を安心して売買できる市場の形成が重要である。しかしながら、現在の我が国の住宅市場は、全住宅取引に占める既存住宅取引の割合が米国等と比較して低い水準にあり、新築住宅中心の市場である。このため、既存住宅の質・価格両面の透明性が確保され、安心して取引できる市場の環境整備のため、既存住宅の性能表示制度や瑕疵保証制度の普及、不動産市況情報の提供、既存住宅の質を考慮した価格査定システムの普及等を推進している。また、平成17年度から住宅ローン減税等の税制特例において、地震に対する安全基準に適合する既存住宅については、築後経過年数に関する要件にかかわらず、対象に加える措置を講じた。
 
図表II-4-4-4 既存住宅流通シェアの国際比較

既存住宅流通戸数と既存住宅流通シェアを国際比較すると、日本は18万戸、13.1%、米国は678万戸、77.6%、英国は179万戸、88.8%、フランスは78万戸、66.4%となっている。
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5)賃貸住宅市場の整備
 賃貸住宅市場においては、戸建て住宅、マンション等の持家ストックの賃貸化等を通じたストックの質の向上を図るため、定期借家制度の普及、サブリース事業(注3)の適正化等の環境整備に取り組んでいる。

6)街なか居住の推進
 子育てや家族の団らん等に時間をかけ、文化、ショッピング等を重視した生活を実現するとともに、長距離通勤や通勤混雑の問題を改善することが求められている。また、高齢者や子育て世帯を中心に歩いて暮らせるような中心市街地での生活を求めるニーズも少なくない。このため、職と住の均衡した都市構造を形成するとともに、都心地域においては、居住を含む多様な都市機能が高度に複合した魅力ある市街地への更新を図る必要がある。
 平成18年8月に施行された「中心市街地の活性化に関する法律」において、街なか居住が柱の一つとして位置付けられており、同法に基づき創設された中心市街地共同住宅供給事業等を実施するとともに、総合設計制度、高層住居誘導地区、用途別容積型地区計画等の活用による住宅供給を誘導し、街なか居住と中心市街地の活性化を総合的に推進している。


(注1)1)廊下の拡幅、2)階段の勾配の緩和、3)浴室改良、4)便所改良、5)手すりの設置、6)屋内の段差の解消、7)引き戸への取替え工事、8)床表面の滑り止め化
(注2)1)平成19年4月1日から20年12月31日までの間に、一定の者が自己の居住の用に供する家屋についてバリアフリー改修工事を含む増改築等工事を行った場合、その住宅ローン残高(上限1,000万円)の一定割合を5年間にわたり所得税額から控除(現行の増改築等に係る住宅ローン減税又は税源移譲に対応した控除額の特例との選択制)
    2)平成19年4月1日から22年3月31日までの間に、19年1月1日以前から存していた家屋のうち一定の者が居住するもの(賃貸住宅を除く。)についてバリアフリー改修工事を行った場合、当該家屋に係る翌年度分の固定資産税額(100m2相当分まで)を1/3減額
(注3)賃貸住宅管理会社が建物所有者(家主)等から建物を転貸目的で賃借し、自ら転貸人となって転借人に賃貸する事業

 

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