第II部 国土交通行政の動向 

(2)空港整備の推進

1)東京国際空港(羽田)の整備
(ア)現状
 東京国際空港(羽田)と全国49空港との間には、1日約420往復(平成18年8月ダイヤ)のネットワークが形成され、国内線で年間約5,945万人(17年度定期便実績)の人々が利用している。
 首都圏における国内航空交通の拠点機能を将来にわたって確保するとともに、航空機騒音の抜本的解消を図るため、東京国際空港(羽田)は昭和59年以来、沖合展開事業を実施し平成18年度に完了した。これらにより、同空港の発着枠は拡大されてきたが、国内航空需要の伸びは著しく、現在定期便に使用しうる810回/日の発着枠はすべて使用しており、既に能力の限界に達している。
 
図表II-5-1-9 東京国際空港(羽田)の離発着回数

東京国際空港(羽田)のいちにち当たりの発着回数は、昭和58年度は400回であったが、徐々に増加を続け、平成7年度は560回、平成12年度は702回、平成18年度は810回となっている。
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(イ)再拡張事業
 再拡張事業は、東京国際空港(羽田)に新たに4本目の滑走路等を整備し、年間の発着能力を増強することにより、発着容量の制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保しつつ国際定期便の受入れを可能とするものであり、平成16年度から事業が進められている。
 このうち滑走路整備事業については、埋立・桟橋組合せ工法で進められており、平成18年度は、環境影響評価手続を完了し、埋立承認に必要な事務手続や漁業者との調整等を実施した。また、国際線地区整備事業については、PFI手法(注1)を活用することとし、3事業(旅客ターミナル事業・貨物ターミナル事業・エプロン等事業)それぞれにおいて民間事業者の決定や事業契約の締結等を実施した。
 
図表II-5-1-10 東京国際空港(羽田)再拡張概略図

東京国際空港(羽田)南側海上に、B滑走路と並行に2,500メートルの滑走路を新設している。

(ウ)国際旅客チャーター便の乗り入れ
 東京国際空港(羽田)は国内線、成田国際空港は国際線の拠点空港であることを基本としつつ、東京国際空港(羽田)の有効活用を図る観点から、同空港の国際旅客チャーター便の乗り入れを実施してきている。深夜早朝時間帯での国際旅客チャーター便については、ソウル、グアム行きを中心に運航され、平成17年度には749便の運航があった。また、15年11月から開始された昼間時間帯における羽田―金浦(ソウル)間の国際旅客チャーター便については、17年8月より1日4便から8便に増便され、17年度は約108万人の輸送があった。

2)成田国際空港の整備
 成田国際空港は、現時点でその処理能力がほぼ限界に達しており、強い増便要請や新規乗入要請に対応できない状況となっている。現在の暫定平行滑走路(2,180m)では、十分な滑走距離が確保できず使用機材の制限等があることから、さらに増大する国際航空需要に対応するため、平行滑走路の2,500m化は喫緊の課題である。
 このため、平成18年、地元自治体等の理解を得た上で、国は成田国際空港株式会社からの申請を受け、北伸による平行滑走路2,500m化のための飛行場及び航空保安施設の変更を許可した。同年、成田国際空港株式会社は工事に着手し、21年度末の供用開始を目指して整備を進めている。
 なお、成田国際空港株式会社は、平成16年に全額国出資の特殊会社となっており、今後の完全民営化に向けて、国際拠点空港のあり方やその適正な運営方策について、検討している。
 
図表II-5-1-11 成田国際空港の施設計画

成田国際空港は、現在、4,000メートルのA滑走路と2,180メートルの暫定滑走路の2本を有しており、完成時には4,000メートル、2,500メートル、3,200メートルの3本の滑走路を有する空港となる計画である。2,180メートルの暫定滑走路を北側に延長して、2,500メートル化する事業の早期完成を目指している。
 
図表II-5-1-12 成田国際空港における発着回数・旅客数

平成14年の暫定平行滑走路の供用開始で、発着枠は13.5万回から20万回と、約1.5倍に増加した。しかし、発着回数の需要は、平成20年頃には年間20万回、平成22年頃には年間22万回に達することが予想されている。
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3)首都圏における国際拠点空港機能の強化
 東京国際空港(羽田)の再拡張後には、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保しつつ、年間おおむね3万回程度の近距離国際旅客定期便を就航させることとし、北伸による平行滑走路2,500m化後の成田国際空港との一体的な運用を図ることにより、首都圏の旺盛な国際航空需要に対応していく。

4)関西国際空港二期事業の推進
 関西国際空港は、平成19年8月2日の供用開始を目指し、二本目の滑走路整備が行われており、整備後は、我が国初の本格的24時間運用が可能な国際拠点空港となる。
 同空港の需要は、平成18年の日中航空交渉の最終合意等により確実に増加してきており、引き続き地元による利用促進活動を行うこととしている。なお、同年7月には神戸−関空ベイ・シャトルが再開され、空港へのアクセス改善が図られた。
 
図表II-5-1-13 関西国際空港二期事業の進捗状況

関西国際空港は、2本目のB滑走路について平成19年8月2日に供用予定であり、必要な施設等の整備を行っている。

5)中部国際空港の動向
 中部国際空港では、国際航空貨物等の利用状況が好調であり、貨物エプロンの拡張及び貨物上屋の増設、また、「シー・アンド・エアー輸送」(注2)として航空機用超大型部品の空輸を実施している。
 
図表II-5-1-14 中部国際空港の利用状況

中部国際空港の平成17年度航空旅客実績は、国際線が533万人、国内線が702万人で、合計1,235万人だった。また、国際航空貨物の取扱実績は、輸出120,695トン、輸入112,363トンで、合計233,058トンと旅客、貨物ともに好調である。
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6)一般空港等の整備
 一般空港等については、離島を除いて新設を抑制するとともに、ハード・ソフト施策の組合せや既存空港の十分な活用を中心とする質的充実に重点を移している。また、滑走路新設・延長に係る新規事業については、透明性向上の観点から国土交通省が空港整備の指針を明示し、真に必要なものに限って事業化することとしている。平成18年度は7空港の滑走路延長事業等を継続して推進するとともに、既存空港の機能保持等を実施している。

7)航空サービスの高度化
 今後の空港整備については、乗継ぎの円滑化や旅客ターミナル施設の充実等、利用者の視点に立った取組みを推進する必要がある。このため、航空サービス高度化推進事業として、既存空港の機能の高度化や運航効率の向上を推進するとともに、重点戦略の展開、物流機能の高度化、ユニバーサルデザインの推進、空港を核とした観光交流の促進に取り組んでいる。


(注1)民間資金等活用事業。公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術能力を活用し、効率的かつ効果的に社会資本整備を図る事業手法
(注2)海上輸送と航空輸送の特徴を有効に組み合わせた輸送

 

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