第II部 国土交通行政の動向 

第4節 産業の活性化

1 鉄道関連産業の動向と施策

(1)鉄道事業

1)鉄道事業の動向と施策
 平成17年度の鉄道旅客の輸送人員については、少子高齢化の進展等厳しい事業環境にあるが、景気回復等により、前年度に比べ増加している。JRについては、愛知万博の開催効果等により新幹線輸送が増加し、在来線における通勤・通学旅客や定期外旅客も増加していることから、JR全体として増加している。また、民鉄については、特に関東において、通勤・通学旅客や定期外旅客が増加していることから、民鉄全体として増加している。
 平成17年度の鉄道貨物の輸送トン数については、JR羽越線列車脱線事故や台風、豪雪等自然災害の影響による輸送障害等が発生したものの、景気の緩やかな回復傾向のほか、モーダルシフトによる自動車部品等の新規増送が一部あり、コンテナ貨物の輸送量は、前年度を上回っている。また、車扱(しゃあつかい)(注)を含めた全体の輸送量も前年度を上回っている。
 各鉄道事業者は厳しい事業環境を踏まえ、サービス改善に向けた取組みを行っている。快適で安心な車内空間確保の観点から、都市圏の主要鉄道事業者が行っている女性等に配慮した車両の導入については、利用者の理解と協力を背景に輸送サービスの一環として着実に定着しつつあり、その後も新規路線への拡充が続いている。ICカード乗車券については、全国各地で導入が実施・計画されており、国では税制上の特例措置によりその共通化・相互利用化を支援している。平成19年3月には首都圏の公営・民鉄事業者及びバス事業者で利用可能な「PASMO」が導入され、同時にJR東日本の「Suica」との相互利用を開始するなど利便性の向上が進んでいる。また、鉄道貨物輸送においても、ICTを活用した列車予約システムの改善等により、鉄道コンテナ輸送の効率化等が図られている。

2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により誕生したJR各社については、「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められていた。JR東日本、JR東海及びJR西日本のJR本州三社は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有する株式の売却も完了し、完全民営化されたが、JR各社が国鉄改革の中で誕生したという経緯を踏まえ、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。
 JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、地域の足の確保や環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の推進等社会的に重要な役割を担っていることから、国は引き続き固定資産税の軽減措置等支援措置の延長により経営基盤の安定・強化を図っており、各社においても完全民営化に向けて、増収努力や経費節減等の取組みを行っている。


(注)貨車を1車貸し切って輸送する方式であり、特に大量輸送の石油等の産業物資輸送に力を発揮している。

 

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