第II部 国土交通行政の動向 

3 海事産業の動向と施策

(1)海上輸送産業

1)外航海運
 我が国は経済活動を維持していく上で必要なエネルギー資源や食料の多くを海外に依存しており、その大半を輸送する外航海運は国民生活・経済活動を支える極めて重要な役割を担っている。平成17年における世界の海上輸送量は、トンベースで68億トン(前年比3.9%増)、トンマイルベースで28兆8,680億トンマイル(前年比4.7%増)となり、ともに過去最高を記録した。このうち、我が国の海上貿易量は、9億4,999万トン(前年比0.9%増)であり、世界の海上輸送に占めるシェアは年々微減傾向にあるものの、全体の14%を占めている。
 
図表II-5-4-5 我が国の商船隊の構成と推移

我が国の商船隊における日本籍船は減少傾向にあり、平成17年の日本籍船は95隻に対し、支配外国籍船は774隻、単純外国用船は1,140隻となっている。
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 我が国の外航海運事業者は激しい国際競争の中で、便宜置籍船(注1)に比べコストの掛かる日本籍船及び日本人船員を大幅に削減してきた。これに対し、国際船舶制度(注2)により税制上の優遇措置、外国人船員承認制度(注3)の導入等の支援措置を講じ、日本籍船及び日本人船員の維持・確保を図っている。一方で、諸外国でも、海洋環境の保全、自国籍船及び自国籍船員の維持・確保等を図るために様々な取組みが行われており、トン数標準税制(注4)の導入も進んでいる。
 こうしたことも踏まえ、日本籍船の増加、日本人船員(海技者(注5))の確保・育成、資源エネルギー等の安定輸送の確保を図ることを目的として、所要の法律を整備すること等を含めた具体的な施策についての検討を交通政策審議会海事分科会において進めている。

2)国内旅客船事業
 国内旅客船事業は、燃料油の高騰、陸上交通との競争等厳しい経営環境にある。輸送実績において大きな割合を占める長距離フェリー航路輸送実績の推移を見ると、平成17年度の自動車航送台数は前年度を上回ったが、12社中4社が経常赤字であり、12社合計でも経常赤字が続いている。このため、船旅の魅力向上や観光業界との連携等に取り組んでいる。
 
図表II-5-4-6 長距離フェリー航路輸送実績の推移

平成17年度の長距離フェリー航路の輸送実績は、自動車航送台数242万台、自動車航送台キロ14億8千万台キロ、旅客輸送人員309万人、旅客輸送人キロ15億5千万人キロとなっている。
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3)内航海運
 内航海運は、トンキロベースで我が国の国内貨物輸送の約4割を担う基幹的物流産業である。保有船腹調整事業の解消を図り、内航海運の活性化を図るため、国土交通省では、内航海運暫定措置事業(注6)の円滑かつ着実な実施を支援している。また、近年における内航船舶の老朽化の進行、船員不足、企業からの物流効率化の要請、燃料油の高騰等の状況を踏まえ、今後とも内航海運が効率的で信頼性の高い輸送サービスの提供ができるよう、新技術の普及促進、船型等の標準化、船舶共有建造制度を活用したスーパーエコシップ(SES)等の地球環境にやさしい省エネ型船舶の建造促進、船員不足に対応した効率的な内航船員の確保対策、グループ化の推進等ビジネスモデルの検討等の施策を盛り込んだ「内航船舶の代替建造推進アクションプラン」を平成18年3月に策定し、現在これら施策を推進している。さらに、同年5月には「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法」の改正により、高度船舶技術の実用化助成業務が独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に追加され、高度船舶技術の研究から普及まで一貫した支援体制が整備された。18年度は、内航海運の効率化等に資する高度船舶安全管理システムの実用化に向けて支援している。
 
図表II-5-4-7 国内貨物輸送分担率の推移

国内貨物輸送分担率の推移を輸送機関別の内訳で見ると、内航海運の占める割合は、約4割ぜんごで推移しており、内航海運は我が国の国内貨物輸送の基幹的物流産業である。
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4)港湾運送事業
 港湾運送事業は海上輸送と陸上輸送の結節点として重要な役割を果たしており、また、事業の効率化や多様なサービスの提供を図る観点から、主要9港以外の地方港においても、主要9港と同様に事業参入を許可制に、運賃・料金を事前届出制とする規制緩和を実施するため、「港湾運送事業法」の改正が行われ、平成18年5月より施行された。


(注1)船舶のコスト削減等を目的として、船主が船籍を便宜的にパナマ、リベリア等の国に登録した船舶
(注2)日本籍船のうち安定的な国際海上輸送の確保上重要な船舶を国際船舶と位置付け、各種の支援措置を行う制度。平成17年7月現在、国際船舶数は87隻
(注3)STCW条約(船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)の締約国が発給した資格証明書を受有する外国人船員を、国土交通大臣の承認により、日本籍船の船舶職員として受け入れる制度(対象国:フィリピン、トルコ、ベトナム、インドネシア、インド、マレーシア)
(注4)外航海運事業者が運航する船舶のトン数を基準として算定するみなし利益を課税標準とする法人税の特例。トン数標準税制が導入されている国においては、一般に、外航海運事業者による納税額は従前の法人税を適用した場合と比べ大幅に減少している。
(注5)「船員法」に規定されている船員、海上実務経験を生かして陸上において船舶の運航管理等の高度な業務を遂行する技術者の総称
(注6)スクラップ・アンド・ビルド方式による保有船腹調整事業を解消し、保有船舶を解体、撤去した者に対して一定の交付金を交付するとともに、船舶建造者から納付金を納めさせる制度

 

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