第II部 国土交通行政の動向 

(2)造船業、舶用工業

1)造船業の国際競争力強化のための取組み
 世界経済の好況に伴う海上輸送の増加、国際的な安全・環境規制の強化に伴う需要等により、平成17年の新造船建造量は4,697万総トン(我が国建造量は1,643万総トン、世界の35.2%)と昨年に続き過去最高を記録し、世界の造船市場は活況を呈する中、他国との競争も激化している。
 日本の造船業は、ほぼ100%の国内生産比率を維持しながら、新造船建造量において半世紀近くにわたり世界トップクラスのシェアを維持し続けているが、その要因として、工程の全自動化が困難な造船現場において高度な技能・判断力を有し、自己裁量性に基づき対応できる優秀な人的資源が存在することがあげられる。しかし、現在、造船技能者の半数近くが50歳以上であり、これらの者が退職することによって、今後、造船現場の技術レベルの急速な低下が懸念されており、造船に関する「匠」の技能の円滑な伝承が必要となっている。
 
造船技能(ぎょう鉄)

 
図表II-5-4-8 世界の新造船建造量の推移

世界の造船市場は活況を呈しており、平成17年の世界の新造船建造量は4,697万総トンと、過去最高を記録している。なお、我が国の新造船建造量は世界全体の35.2%を占めている。
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図表II-5-4-9 造船技能者の年齢構成

造船技能者の半数近くが50歳以上と高齢化しており、大手、中小造船所、協力会社ともに平均年齢は、40才代半ばとなっている。
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 このような状況の中、造船産業を担う次世代の人材を育成するため、(社)日本中小型造船会を通じ、新人・中途採用者の即戦力化のための座学・実技研修等を支援している。

2) 舶用工業の活性化に向けた取組み
 平成17年における我が国舶用工業製品の生産額は、9,757億円(前年比約11%増)と大幅に増加し、当分の間は高水準の操業状態が継続する見通しにある。最近の特徴としては、新たな電子機器の船舶への搭載義務付け、船舶からの排出ガスの低減による環境問題への対応等により、船舶電装業、舶用機関整備業の重要性が増してきていることが挙げられる。
 我が国の舶用工業が解決すべき課題としては、舶用工業製品の当面の供給対象が、低船価水準期に受注した船舶向けであることや、原材料価格の急激な上昇があることによる収益性の低迷、熟練労働者の減少、内航船・漁船の代替建造低迷等が挙げられる。このため、各種支援措置の活用や模倣品問題対策等を通じて、中核的事業の強化や産業構造の転換等を行い、産業基盤及び国際競争力の強化を図っている。
 また、国土交通省は、地球温暖化防止対策や原油の高騰等に対応し、省エネに資する舶用機器の普及、利用促進に向け積極的に取り組んでいる。

3)中小造船業・中小舶用工業の経営基盤強化
 中小造船業・中小舶用工業は、国内物流の約4割(トンキロベース)を担う内航海運に船舶を供給している重要な産業である。しかし、近年は内航船の建造需要の低迷、漁船の減船等による中小型船舶の新造船需要の長期にわたる低迷に、従業員の高齢化や人材育成の遅れも相まって、経営基盤が極めて脆弱化しており、社会ニーズに対応した良質な船舶の供給ができなくなる事態も懸念されている。
 このような中、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に基づき、経営革新や異分野の事業と連携した自主的取組みについて計画の承認・認定を受けた中小企業に対し、「中小企業信用保険法」の特例措置、政府系金融機関の低金利融資、税制特例措置等による支援を行っている。

4)海事産業技術の開発・実用化
 近年、海事産業技術には、効率的な海上物流システムの構築が求められているとともに、京都議定書の発効等による環境への意識の高まりから、環境・エネルギー問題への取組みがより一層求められている。造船産業の国際競争力を維持・強化しながら、こうした社会的要請に的確にこたえていくため、現在、これまで未活用であった中小ガス田の開発を促進することにより天然ガスの安定供給に資する天然ガスハイドレート(注1)輸送船、次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発等先進的な技術の開発・実用化を推進しており、さらに、大気汚染物質の排出を大量に削減する「環境にやさしい舶用エンジン」の開発についても検討を開始している。
 一方、様々な調査・実験(注2)により、浮体式空港や情報基地としての利用可能性が実証された、我が国発の最先端技術であるメガフロート技術については、国土交通省として技術の周知、啓発に努めるとともに、日ASEAN交通連携の取組みにおいてASEAN諸国におけるメガフロート利用計画の実現可能性を調査するなどの国際的な対応を進めている。
 
メガフロート空港モデルでの実証実験



(注1)天然ガス分子をカゴ状の水分子が取り囲んだ固体物質
(注2)メガフロート空港利用調査検討会、羽田空港再拡張事業工法評価選定会議、メガフロート情報基地機能実証実験等

 

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