第II部 国土交通行政の動向 

(3)船員対策

1)船員(海技者)の確保・育成
 独立行政法人海技教育機構(海技大学校と海員学校を平成18年4月に統合)及び航海訓練所において、安全・高品質な海上輸送の確保のため必要不可欠な人的基盤である船員(海技者)の確保・育成を行っている。特に、船員の高齢化の進展と後継者不足が著しい内航海運においては、自社の船舶で船員教育を行っていくことが難しく、船員教育機関における即戦力船員の育成が従来以上に期待されているなど、海事産業が求める船員像にも変化がみられる。このため、平成18年4月に、外・内航船社、船員教育機関等による「船員教育のあり方に関する検討会」を設置し、社会のニーズを踏まえ長期的な観点に立った今後の船員教育のあり方について、検討を行い、19年3月に具体的な見直しの方向を取りまとめた。
 
図表II-5-4-10 船員数の推移

我が国の船員を外航船員、内航船員、漁業船員別の推移でみると、いずれも減少傾向にある。例として平成2年と17年の各船員数の推移をみると、外航船員は10,084人から2,625人、内航船員は56,100人から30,762人、漁業船員数は69,486人から28,444人へと減少している。
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2)船員雇用対策
 船員を取り巻く雇用情勢は、平成17年度の有効求人倍率が0.45倍と対前年比0.25ポイントの増加となっており、上昇傾向にあるが引き続き厳しい状況であり、高齢化に伴う将来の船員不足を見据えて世代交代を円滑に進めていく観点から、若年船員確保対策と離職船員対策の双方を積極的に推進している。
 若年船員確保対策としては、船員の高齢化の進展や日本商船隊の拡大に伴い、日本人外航船員(海技者)を確保・育成する必要があることから、新たな支援策について、外航労使と共に検討を進めているほか、(財)日本船員福利雇用促進センターを活用してトライアル雇用助成事業、即戦力助成事業を実施している。
 一方、離職船員対策としては、全国の地方運輸局等において船員職業紹介、就職指導等を行うほか、いわゆる離職四法(注)に基づく職業転換等給付金の支給を行っている。
 また、求人者と求職者を一堂に集め、企業説明会や就職面接を集中的・効率的に行うためのイベント(船員就業フェア)を開催しており、平成18年度は5地域で開催した。
 
図表II-5-4-11 年齢別船員の構成

船員のうち職員(船長、航海士、機関長、機関士、通信長、通信士、医師、事務長、事務員等)の年齢構成は、50才代前半にピークがあり、全体の約30%を占めている。また、船員のうち部員(職員以外の乗組員)は、全体の約22%を占める20才台後半と、是全体の約15%を占める50才台前半の、2つの年齢層にピークがある。
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3)船員の労働環境整備の推進と乗組み体制の見直し
 船員の労働環境における安全衛生の一層の向上を図るには、船舶所有者等関係者による船員の労働災害防止に向けた自主的な取組みの促進が不可欠であるとの観点から、個々の船舶所有者の自主的努力を評価し認定する船員労働災害防止優良事業者(一般型)認定制度を、平成18年度より新設した。
 また、18年3月の「部門間兼務検討会」において、内航貨物船の部門間兼務に係る実証実験の取りまとめがなされ、これを受けて、同年4月から「船舶職員及び小型船舶操縦者法」における部門間兼務が認められることとなり、甲板部の船舶職員(航海士)と機関部の船舶職員(機関士)の兼務が可能となった。


(注)「漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法」、「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法」、「船員の雇用の促進に関する特別措置法」、「本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法」

 

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