第II部 国土交通行政の動向 

(3)土砂災害対策

 我が国では、集中豪雨や地震等に伴う土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が、過去10年の年平均で約1,000件発生しており、多大な被害を与えている。また、自然災害による犠牲者のうち、土砂災害によるものが大きな割合を占めており、平成18年の梅雨前線による豪雨(6月22日〜7月31日)では、死者32名のうち21名が土砂災害によるものであった。
 
図表II-6-1-7 過去10年(平成9〜18年)の土砂災害の発生件数

平成9年から18年の過去10年の年平均土砂災害発生件数は、がけ崩れ 773件、地すべり188件、土石流200件、合計1,161件である。過去10ねんのうち最大は、平成16年で、がけ崩れ1,511件、地すべり461件、土石流565件、合計2,537件である。
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平成18年の梅雨前線による豪雨で発生した土砂災害(長野県岡谷市)


 このため、迅速な避難が困難な箇所に対する施設整備や、自助、共助、公助により少なくとも土砂災害による犠牲者を出さないことを目指した安全かつ確実な避難体制の構築等、ハード・ソフトの連携による効果的な土砂災害対策を推進している。

1)根幹的な土砂災害対策
 荒廃した山地を源流域に持つ河川は、そこから流れ出す土砂により流域全体にわたって甚大な被害をもたらす。このような土砂災害を未然に軽減し、広域的な国土保全を図るため、砂防関係施設の整備を推進している。

2)土砂災害発生地域の緊急防災対策
 土砂災害発生箇所及び周辺地域を含めた集中的な砂防関係施設の整備により、近年甚大な土砂災害が発生した地域において、再度災害防止対策を強力に推進している。

3)都市山麓における土砂災害対策
 都市域における土砂災害に対する安全性を高め、緑豊かな都市環境を創出するため、市街地に隣接する山麓斜面に一連の樹林帯(グリーンベルト)を形成することを推進している。平成18年度は、六甲地区(兵庫県)等16地区において実施している。

4)警戒避難体制と一体となった土砂災害対策
 警戒避難体制の前提となる避難場所が必ずしも土砂災害に対して安全でない地域においては、住民の避難のための支援体制を強化するとともに、砂防施設の整備による避難場所等の保全を推進する。

5)土砂災害防止法の推進
(ア)土砂災害警戒区域等の指定の推進
 「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」に基づき、土砂災害が発生するおそれのある「土砂災害警戒区域」を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある「土砂災害特別警戒区域」において、一定の開発行為の制限、建築物の移転勧告等のソフト対策を講じている。平成18年12月末現在、全国で土砂災害警戒区域は23,324箇所、土砂災害特別警戒区域は11,538箇所が指定されている。
 近年、土砂災害が多数発生し、多くの犠牲者が出たことから、平成18年9月には「土砂災害防止対策基本指針」を変更し、土砂災害特別警戒区域等の指定を更に促進している。
(イ)危険住宅の移転の促進
 崩壊の危険があるがけ地に近接した危険住宅については、「がけ地近接等危険住宅移転制度」の活用等により移転が促進されている。平成17年度は、この制度により危険住宅80戸が除却され、危険住宅に代わる住宅70戸が建設された。

 

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