第II部 国土交通行政の動向 

(5)地震・火山活動等の監視体制の充実

1)気象庁における取組み
(ア)地震・津波対策
 地震・津波による災害の防止・軽減を図るため、全国の地震活動を24時間監視し、地震・津波情報の提供、津波注意報・警報の発表等を行っている。平成18年度は、地震発生メカニズムを反映した津波予報の高度化や、関係機関の潮位データ一元化による津波監視の強化等の津波対策を行ったほか、地震による大きな揺れが到達する前に到達時刻や震度等の情報を伝えることを目指す「緊急地震速報」の先行的な提供を、混乱を生じることなく適切な利活用が可能な分野に対して18年8月から開始した。また、同年10月から「緊急地震速報」の技術を活用することにより、一部の地震では最速2分以内に津波予報を発表することが可能となった。今後は、広く国民の方々が早期に「緊急地震速報」の利用開始ができるよう、情報への理解の普及・啓発に努めていく。
(イ)火山対策
 全国4箇所の「火山監視・情報センター」では、火山活動が活発な30火山を24時間監視するとともに、その他の火山についても調査観測を実施し、関係機関のデータを含めた各種観測データの集中的な監視結果に基づき、火山に関する総合的な情報を提供している。火山活動に異常が見られた場合には監視体制の強化を図るほか、関係機関と連携を図り情報の収集を進め、火山情報の迅速かつ的確な発表に努めている。
 また、火山情報を防災機関等が利用しやすくするため、火山ごとに設定した6段階(0〜5)の火山活動度レベルを付加した火山情報を提供している(平成18年12月末現在12火山)。

2)海上保安庁における取組み
(ア)海底地殻変動等の監視
 日本海溝、相模トラフ及び南海トラフ周辺に海底基準局を設置し、巨大地震の震源となる可能性のある海底プレート境界付近の地殻変動を観測している。また、地震及び火山噴火の予知に資するため、南関東の離島にGPS(全地球測位システム)受信機を設置し、島しょ等の動きを監視している。
 
図表II-6-1-15 海底地殻変動観測概要

日本海溝、相模トラフ及び南海トラフ周辺に海底基準局を設置し、巨大地震の震源となる可能性のある海底プレート境界付近の地殻変動を観測している。また、地震及び火山噴火の予知に資するため、南関東の離島にGPS(全地球測位システム)受信機を設置し、とうしょ等の動きを監視している。

(イ)海底火山噴火に係る観測等
 海底火山の噴火の前兆として周辺海域に認められる変色水等の現象を把握し、一般航行船舶に情報を提供している。また、海底火山噴火予知の基礎資料とするため、海域火山基礎情報の整備及び総合的な調査を行っている。

3)国土地理院における取組み
(ア)地殻変動観測・監視体制の強化
 全国の電子基準点を1,233点に増設し、GPS連続観測による国土の監視を図るとともに、陸域観測技術衛星「だいち」を用いた地殻変動の監視を強化している。
 GPS連続観測により、平成18年3月から5月にかけて発生した伊豆半島東方沖の地震活動や、箱根等の火山周辺において地殻変動が観測されている。なお、13年春頃から東海地域西部で観測されていた通常とは異なる地殻変動は、ほぼ終息している。
 
図表II-6-1-16 GPS連続観測が捉えた日本列島の動き

新潟県上越市(旧大潟町)の電子基準点を固定した、2005年10月から2006年10月までの1年間の地殻変動量である。ベクトルは各観測点の変動量と方向を表している。日本列島は4のプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピンかいプレート、太平洋プレート)がぶつかり合う場所にあるため、複雑な地殻変動が見られる。なお、この地殻変動の中には、平成18年3月から5月に発生した伊豆半島東方沖の地震活動に伴う地殻変動等も含まれる。

(イ)地震、火山噴火等に伴う自然災害に関する研究等
 GPS、合成開口レーダー(SAR)、水準測量等測地観測成果から、地震・火山噴火の発生メカニズムを明らかにしている。また、航空機レーザ測量データやGIS等を利用した解析システムを活用し、地形変化による自然災害の軽減に資する研究・技術開発を行っている。
 さらに、関係行政機関・大学等と地震予知に関する各種データ・情報を交換し、検討を行う地震予知連絡会を運営している。そのほか、海岸昇降検知センターを運営し、各省庁や公共機関等が設置している潮位観測施設の記録から地殻活動を検出し、地震予知研究に役立てている。

 

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