第II部 国土交通行政の動向 

第2節 建築物の安全性確保

(1)住宅・建築物の生産・供給システムにおける信頼確保

 今般の構造計算書偽装問題は、一級建築士が構造計算書を偽装し、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、居住者等の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物の耐震性に対する不安を広げている。
 構造計算書偽装問題では、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が、職業倫理を逸脱して構造計算書の偽装を行い、その偽装を、元請設計者、指定確認検査機関、建築主事いずれもが見抜けなかったほか、事件発生後も多くの建築士において不適切な業務が行われている実態が明らかになっており、建築確認・検査制度及び建築士制度への国民の信頼を大きく失墜させた。
 このような事件の再発を防止し、法令遵守の徹底と建築士等による適正な建築活動の確保を図り、国民が安心して住宅の取得や建築物の利用ができるよう、早急に制度の見直しを図っている。
 平成18年6月には、建築確認・検査制度を見直すため、1)高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物等に対する構造計算適合性判定の義務付け等による建築確認・検査の厳格化、2)特定行政庁の立入検査の実施等による指定確認検査機関の業務の適正化、3)建築士等に対する罰則の大幅強化等を内容とする「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律」が成立した。また、同年12月には、建築士制度の抜本的見直しを行うため、1)建築士に対する定期講習の受講義務付け等による建築士の資質・能力の向上、2)一定規模以上の建築物について構造設計一級建築士等による法適合チェックの義務付けによる構造設計等の適正化、3)管理建築士の要件強化、設計受託契約等の締結前の重要事項説明の実施等による建築士事務所の業務の適正化等を内容とする「建築士法等の一部を改正する法律」が成立した。さらに、消費者保護の観点から、1)建設業者による住宅建設瑕疵担保保証金の供託、2)宅地建物取引業者による住宅販売瑕疵担保保証金の供託、3)住宅に係る一定の保険の引受けを行う住宅瑕疵担保責任保険法人の指定等を内容とする「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案」を第166回国会に提出した。

 

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