第1節 人口減少を踏まえた社会の再構築 

2 社会を支える担い手の再発見

 これまで、社会生活における公共的な役割は、主として国や地方公共団体等の行政が主体となって担ってきた。今後の人口減少や将来的にも厳しい財政状況を踏まえると、社会の基盤整備のあり方だけでなく、社会を支える担い手の観点からも、求められるものを考える必要がある。

(これまでのスタイルの限界)
 国や地方公共団体の財政は厳しい状況にあり、また高齢化等を背景に求められるものも増える中、国民一人ひとりのニーズにきめ細やかに対応していくに当たって、行政だけでそれを担っていくことには限界が予想される。実際に、地域によっては公共交通や福祉などの社会サービスの継続が困難となったり、あるいは従来以上にきめ細かな対応が必要となったりするなど、地域づくりを進める上で様々な課題が生じている。
 一方で、人々の社会貢献への意向が近年高まりを見せている(注)。個人、NPO、企業等の多様な民間主体が、私的な利益にとどまらない公共的な機能を担っていく気運が高まっている。
 居住地域のための活動について、国土交通省の調査において人々の参加意向を尋ねたところ、公園や道路等の維持管理等については行政の領域であるとの認識が依然として高いものの、ボランティア団体・NPO等の団体に任せるがそのためならお金を支払ってもよいと考えている人々が4人に1人以上いることがわかった。また、地域活性化のための行事の企画・運営には約4割の人々が参加してもよいと考えている。
 
図表68 居住地域のための活動主体

図表68 居住地域のための活動主体
Excel形式のファイルはこちら

(多様な担い手の参画)
 今後は、多様な担い手が地域の生活を支え活力を維持する機能を果たすことが求められる。防犯・防災対策、子育て支援、高齢者福祉、地域交通の確保、環境保全など、地域における広汎な課題に対応していくことが求められる。
 NPO等の民間主体と行政、あるいはNPO等の民間主体同士が相互に有機的に連携して知恵を出し合い協働し、従来の行政が担っていた公共的な領域、公と私の中間的な領域、公共的価値を含む私の領域にまで活動を拡げていくことが期待される。
 
図表69 多様な担い手の形

図表69 多様な担い手の形

 
図表70 活動領域の例

図表70 活動領域の例

 また、民間企業が本業のみを行うのではなく、その技術を活かして地域のニーズに応じた社会サービスを提供することも考えられる。地域の民間事業者、例えば重機を扱える建設業者が耕作放棄された棚田の管理等を行うなど、持っている能力を活かして地域の活力維持に対応している動きもある。
 行政だけでなく多様な民間主体が地域づくりの担い手となって、その協働によって地域のニーズに応じた社会サービスの提供等を行うことは、人口が減少する社会において欠かせない視点である。このような取組みにより、社会的コストが軽減されたり、地域経済が活性化されたりするなど、多面的な効果が期待される。


(注)第1章第3節図表56「社会志向と個人志向」参照。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む