第3節 動き方の変化

(2)自動車利用の動向

(免許保有率は依然として高水準)
 若者の運転免許の保有率は、他の年齢層の免許保有率が上昇しているとは対照的に、微減の傾向にある。この傾向は特に東京都において顕著であり、20代では1991年に74.2%であった免許保有率が2011年には63.5%まで減少している。ただし、2011年時点でも、全国においては20代の8割以上、30代においては9割以上の者が免許を保有していることから、若者の免許保有率は依然として高い水準にあると言える。また、10代及び20代で免許保有率の低下が見られることについても、他の年齢層の免許保有率が上昇基調で推移していることから、現在の若者についても取得年齢の後ろ倒しが起こっている可能性もあり、免許取得意向が弱まっていると一概に言うことはできない(図表163、164)。
 
図表163 年齢階級別運転免許保有率の推移(全国)
図表163 年齢階級別運転免許保有率の推移(全国)
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図表164 年齢階級別運転免許保有率の推移(東京都)
図表164 年齢階級別運転免許保有率の推移(東京都)
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(自動車保有率は属性により異なる動向)
 自動車保有率を世帯形態別に見ると、単身世帯では1999年から2009年の10年間に30歳未満では55.3%から46.5%へ8.8ポイント、30代では63.2%から57.5%へ5.7ポイント減少しているのに対し、二人以上の一般世帯では、30歳未満で87.5%から81.5%まで6.0ポイント、30代では91.3%から89.4%へと1.9ポイントしか減少しておらず、単身世帯における減少が相対的に大きいことが分かる(図表165)。これは、二人以上の世帯、特に夫婦と子どもから成る世帯等においては、同一目的地に複数人で移動する機会が多く、コストや利便性の観点から公共交通機関よりも自家用車を選択することが多いためと推測される。
 
図表165 世帯形態別自動車保有率
図表165 世帯形態別自動車保有率
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 また、「全国都市交通特性調査」により女性の子供の有無別の交通分担率を見てみると、子供がいる就業者の平日の交通分担率は、子供のいない就業者の平日の分担率よりも、三大都市圏においても地方都市圏においても自動車の分担率が高くなっていることが分かる。なお、非就業者についても同様の傾向が見られる(図表166)。
 
図表166 女性の子供の有無別の交通分担率
図表166 女性の子供の有無別の交通分担率
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 また、若者(30歳未満)の自動車普及率を男女別に見ると、1999年から2009年の間に男性では63.1%から49.6%へと13.5ポイント減少しているのに対し、女性では42.7%から43.6%へと0.9ポイント増加している(図表167)。女性は、就業率の高まり等を受け、自動車で外出する機会や外出する範囲が拡大したことから、このように男女で異なる傾向となっていると考えられる。
 
図表167 30歳未満の単身勤労世帯の自動車普及率の推移(男女別)
図表167 30歳未満の単身勤労世帯の自動車普及率の推移(男女別)
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 東京都の免許保有率が全国と比べて大きな幅で減少していることについては先に述べたが、自動車の保有率については、東京圏内においても、都心部に居住する者か郊外部に居住する者かで動向は異なる。概して都市部では、電車やバス等の公共交通機関が充実していることから自家用車に拠らずとも移動ができることや、自動車を保有した場合に駐車場の確保が難しい等の理由により自動車保有率が低くなると考えられるが、東京圏についても、都心から離れた地域になればなるほど自動車保有率が高くなる傾向にあることが分かる(図表168)。また、東京圏の地域別の自動車保有率の経年変化を見ても、1998年から2008年の間に都心近くでは自動車保有率が低下したが、郊外部では保有率が増加している(図表169)。
 
図表168 若者(世帯主が20代・30代)の自動車保有率(2008年)
図表168 若者(世帯主が20代・30代)の自動車保有率(2008年)

 
図表169 若者(世帯主が20代・30代)の自動車保有率の変化(1998年→2008年)
図表169 若者(世帯主が20代・30代)の自動車保有率の変化(1998年→2008年)


(若者の「車離れ」)
 以上のように、若者の免許保有率と車の保有率はそれぞれ減少傾向にあるが、若者の免許取得率は車の保有率ほどは減少していないことから、車の「保有」意欲と車の「利用」意欲を別々に扱うことが適切と考えられる。すなわち、日常的な移動目的で車を保有する必要性が低下していることや経済的な理由により車の保有意欲が減退する一方、免許を保有することは将来的に車を運転する機会に備えてのことであることを踏まえると、レンタカーを利用して旅行に出かけるなど、単発的な機会に自動車を利用しようとする意欲は継続しているものと考えられる。
 また、若者の自動車保有意欲についても、「いずれは保有したい」という意向自体はあるものの、現在は経済的な理由等により自動車を保有することが難しく、購入を後ろ倒しにしていることから、若者の自動車保有率が落ち込んでいると見ることもできる。現在自動車を保有しない者の中で、「いずれ購入したいと思っているが、今は費用や保管場所などが確保できない」という者の割合が20代・30代で高くなっていることや、自動車保有率について、単身世帯では40代以降の年齢層において、二人以上の世帯については60代以降の年齢層において保有率が上昇する傾向にあることから、現在の若者についても、より高齢になったときに自動車を取得する可能性もある(図表170)。
 
図表170 車を保有しない理由
図表170 車を保有しない理由
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 自動車を保有せず、必要な時に利用する方法として、これまではレンタカーの利用が見られたが、近年はカーシェアリングの利用も進んでおり、レンタカー型カーシェアリングの事業者数、車両数、貸渡拠点数は年々大きく増加している(図表171)。タイムズ24株式会社のアンケート調査によると、将来的な車の保有意向については、「元々、購入しようと思っていた」者が32.7%となっており、自家用車を購入するまでの代替手段としてカーシェアリングを利用している者も多いことが分かる。また、カーシェアリング利用前後の購入意欲の変化を見ると、カーシェアリング利用後に「購入意欲あり」と答える者の割合が若者ほど高くなっており、車に触れる機会が増大することにより、今後、車の保有意欲が高まることも考えられる(図表172)。また、このようなカーシェアリングの普及に見られるように、自らの専有物であるかどうかにこだわらず、利用したい時や必要な時に利用ができれば良いと考える志向は、車の保有形態の変化にも現れている。自家用自動車の保有形態は、個人専用から家族との共有にシフトしてきており、1999年には81.4%だった個人専用車の割合が、2010年には66.8%まで減少している(図表173)。
 
図表171 レンタカー型カーシェアリングの事業者数、車両数、貸出拠点数
図表171 レンタカー型カーシェアリングの事業者数、車両数、貸出拠点数
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図表172 カーシェアリング利用者の車の購入の意思
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図表173 自動車の所有形態の変化
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