第3節 利便性の高い交通の実現
(1)都市・地域における総合交通戦略の推進
安全で円滑な交通が確保された集約型のまちづくりを実現するためには、自転車、鉄道、バス等の輸送モード別、事業者別ではなく、利用者の立場でモードを横断的にとらえる必要がある。このため、地方公共団体が公共交通事業者等の関係者からなる協議会を設立し、協議会において目指すべき都市・地域の将来像と提供すべき交通サービス等を明確にした上で、必要となる交通施策やまちづくり施策、実施プログラム等を内容とする「都市・地域総合交通戦略」を策定(平成26年3月現在84都市で策定・策定中)し、関係者がそれぞれの責任の下、施策・事業を実行する仕組みを構築することが必要である。国は、同戦略に基づき実施されるLRT注1等の整備等、交通事業とまちづくりが連携した総合的かつ戦略的な交通施策の推進を支援することとしている。
(2)渋滞緩和に向けたTDM等の推進
自動車交通の状況や道路交通の混雑を解決する処方せんは都市ごとに異なるものであるが、TDM注2は都市の特性に応じて措置ができる施策であり、総合的かつ効果的なTDMの普及を推進している。
朝夕のラッシュ時等に発生している渋滞を緩和するために、道路ネットワークの整備、ボトルネックの解消等の交通容量拡大策に加え、バスロケーションシステムの導入等の公共交通機関の利用促進策や、パークアンドライド注3、時差通勤等のTDM施策を実施している。また、地域によっては、バス路線マップや個別冊子を住民に配布することで、自動車の使い方の見直しを促し、公共交通を有効に使うモビリティマネジメント注4を実施していることに加え、路上工事の抑制等により交通への影響の低減に努めている。
また、円滑かつ安全な交通サービスの実現のため、ITS技術を用いて収集したビッグデータを活用し、既存ネットワークの最適利用を図るなど、道路を賢く使う取組みを推進している。
(3)公共交通の利用環境改善に向けた取組み
地域の公共交通について、バリアフリー化されたまちづくりの一環として、より制約の少ないシステムの導入等、地域公共交通の利用環境改善を促進するために、地域公共交通確保維持改善事業により、LRT、BRT、ICカードの導入等を支援している。平成25年度においては、阪堺電気軌道等で低床式車両の導入が行われている。
(4)都市鉄道ネットワークの充実
都市鉄道ネットワークは、輸送力増強による混雑緩和を主眼とした整備が進められてきた結果、相当程度拡充されてきた。その結果、大都市圏における鉄道の通勤・通学時の混雑は少子高齢化の進展等と相まって低下傾向にあるが、一部の路線では混雑率が180%を超えるなど依然として高く、引き続き混雑緩和に取り組む必要がある。このため、特定都市鉄道整備積立金制度を活用した小田急小田原線複々線化工事や東急東横線改良工事を進めている。
また、既存の都市鉄道ネットワークを有効活用しつつ、速達性の向上や交通結節機能の高度化を図ることを目的とする「都市鉄道等利便増進法」を活用し、神奈川東部方面線(相鉄〜JR・東急直通線)等の整備を進め、利用者利便を増進するなど、都市鉄道ネットワークの一層の充実を図っている。