第1節 地球温暖化対策の推進

コラム 下水汚泥から水素作ってます、クルマも走ります

 2015年5月に改正された下水道法では、下水道管理者に対する下水汚泥のエネルギー利用の努力義務規定が盛り込まれました。下水汚泥のエネルギー利用には、バイオガス発電や固形燃料製造等の方法がありますが、近年下水汚泥から水素を製造する方法が注目されています。
 下水汚泥から製造した水素は、製造時にCO2を排出する化石燃料由来の水素と比較し環境負荷の低減が可能であり、また地域資源の活用によるエネルギーの地産地消への貢献など、複数の面からメリットがあるため大きな期待が寄せられています。

■下水汚泥からの水製造・利活用に係る取組み
【水素リーダー都市プロジェクト〜下水バイオガス原料による水素創エネ技術の実証〜】
 本プロジェクトでは、三菱化工機(株)、福岡市、九州大学、豊田通商(株)の4者が、福岡市の下水処理場において実規模レベルの実証施設を建設し、下水汚泥から安定的に水素を製造できるかどうかについて実証試験を行っています。また、発生するCO2の利用なども併せて行われています。
 平成26年度より実施しており、これまでの結果から安定的な水素製造が確認されました。
 
下水汚泥からの水製造・利活用に係る取組みの図
下水汚泥からの水製造・利活用に係る取組みの図

【下水汚泥由来の水素の利用に関する検討】
 国土交通省では、平成27年に開催した「水素社会における下水道資源利活用検討委員会」において、下水汚泥からの水素製造の事業化の意向を持つ弘前市・埼玉県・横浜市の下水処理場をモデルに、下水汚泥からの水素の製造・利活用について実現可能性調査を行い、技術面、制度面、経済性等の課題や、その解決策等について検討を行いました。

■今後の取組みに向けて
 下水汚泥からのバイオガスの生成量は、平成25年度には約3.3億Nm3ですが、このバイオガスのうち約3割(8,900万Nm3)は焼却処分されており、有効に活用されているとは言えません。この未利用のバイオガスから水素を製造すると、燃料電池自動車への水素の充填約270万回分に相当します。このように下水汚泥からの水素製造については、大きなポテンシャルを有しています。
 
水素燃料電池車「MIRAI」と水素ステーション
水素燃料電池車「MIRAI」と水素ステーション

 国土交通省では、技術開発への支援、実現可能性調査等による案件形成支援や事業化支援等を通じて、再生可能エネルギーである下水汚泥からの水素供給・利活用の実現に向けて取組を推進して参ります。


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