第1節 我が国を取り巻く環境と社会経済状況

■2 我が国が直面する課題

(1)切迫する巨大地震、激甚化する気象災害等
 我が国は、地理的、地形的、気象的条件等から、古来より多くの災害に見舞われており、近年においても、地震・津波、噴火、台風、水害、土砂災害、豪雪等の災害が頻発している(図表1-1-7)。
 
図表1-1-7 近年の主な災害
図表1-1-7 近年の主な災害

 地震については、首都圏を襲う首都直下地震や、東日本から九州の太平洋沿岸を中心に強い揺れと高い津波に見舞われるおそれのある東海・東南海・南海地震等、南海トラフにおける巨大地震発生の切迫性が指摘されている。2016年4月の熊本地震では、14日及び16日に最大震度7を記録し(図表1-1-8)、大規模な斜面崩壊による土砂災害、建築物の倒壊等の被害が発生した。
 
図表1-1-8 2016年熊本地震(最大震度7を記録した地震の震度分布図)
図表1-1-8 2016年熊本地震(最大震度7を記録した地震の震度分布図)

 また、我が国は世界でも有数の火山国であり、ひとたび噴火が発生すると、被害の長期化、住民生活や社会経済活動へ甚大な影響を与えることが懸念される。2014年には御嶽山の噴火により50名を超える方々が犠牲となった。
 気象に目を向けると、近年の気候変動に伴い、1時間降水量80mm以上の短時間強雨の発生回数が30年間で1.5倍に増加するなど、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化している。2014年8月には、広島市で短時間の集中豪雨により、大規模な土砂災害が発生した。また、2015年9月の関東・東北豪雨では、茨城県内の鬼怒川で堤防が決壊し、大きな被害が発生した(図表1-1-9)ほか、2016年6月から9月にかけての暴風雨及び豪雨により北海道や東北、九州で大きな被害が発生した。
 
図表1-1-9 2015年9月関東・東北豪雨
図表1-1-9 2015年9月関東・東北豪雨

(2)加速するインフラ老朽化
 我が国では、高度経済成長期以降に集中的に整備された社会資本の老朽化が進んでおり、国土交通省が所管する社会資本の維持管理・更新費は、現在の技術や仕組みによる維持管理状況がおおむね継続すると仮定すると、2013年度には約3.6兆円であったものが、20年後には約4.6〜5.5兆円になるものと試算されている(図表1-1-10)。既存の社会資本の安全確保と維持管理・更新に係るトータルコストの縮減・平準化の両立が必要となっている。
 
図表1-1-10 社会資本の維持管理・更新費及び老朽化状況
図表1-1-10 社会資本の維持管理・更新費及び老朽化状況

(3)地方の疲弊
 全国レベルで本格的な人口減少社会を迎える中、特に、地方の人口減少は顕著で、中長期的な将来人口推計によれば、2050年には全国の約6割の地域で人口が半分以下となり、地方消滅の危機となっている。人口減少が進行した場合、生活関連サービスの縮小、雇用機会の減少、税収減による行政サービス水準の低下、地域公共交通の撤退・縮小、空き家、空き店舗、工場跡地、耕作放棄地等の増加、地域コミュニティの機能低下などの影響が想定される。人口減少によるそれぞれの影響は、生活利便性の低下や地域の魅力の低下を通じて、さらなる人口減少を招くという悪循環に陥ることが考えられる(図表1-1-11)。
 
図表1-1-11 国土全体での人口の低密度化と地域的偏在が同時に進行(2010年→2050年)
図表1-1-11 国土全体での人口の低密度化と地域的偏在が同時に進行(2010年→2050年)
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(4)財政状況
 債務残高の対GDP比は、経済規模に対する国の債務の大きさを計る指標であり、財政の健全性を図る上で重要な指標である。諸外国と比較すると、我が国の国・地方公共団体を合わせた債務残高の対GDP比は、最も厳しい状況となっており、今後、限られた財源を効率よく配分し、先述した様々な課題に対応していくことが求められている(図表1-1-12)。
 
図表1-1-12 債務残高の国際比較(対GDP比)
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