第2節 国土交通省における新たな技術・サービスの社会実装の取組み状況
■1 国土交通省の政策
我が国は世界に先駆けて本格的な人口減少時代に突入する中、持続的な経済成長を実現していくためには、人口減少に伴う供給制約や人手不足を克服する「生産性革命」を強力に推進していく必要がある。このためには、「日本再興戦略2016」(2016年6月閣議決定)でも示されているように、IoT、AI、ビッグデータ、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用していくこと(第4次産業革命)が最大の鍵の1つとなる。加えて、財政制約が厳しさを増す中、効果的かつ効率的に施策を進めるためにも新技術の活用が非常に重要になる。
国土交通省では、2016年を「生産性革命元年」として生産性の向上などにつながる取組みを進めているが、この中でもこれらの観点から、新たな技術の社会実装を進めることが重要な視点の1つとされている。
また、持続可能な社会の実現のため、国土交通行政における事業・施策の効果・効率をより一層向上させ、国土交通技術が国内外において広く社会に貢献することを目的に、技術政策の基本方針を示し、技術研究開発の推進、技術の効果的な活用、技術政策を支える人材の育成等の重要な取組みを定めるものとして、新たな国土交通省技術基本計画を2017年3月に策定したところである。
(1)生産性革命プロジェクト
人口減少時代にあっても、持続的な経済成長を遂げていくためには、1)生産性向上により潜在成長率を高めていくこと、2)新たな市場の創出・掘り起こしを進めていくことが必要である。また、生産年齢人口の減少により、多くの業界で、人手不足が懸念されており、これに対応するためにも、働き方改革により将来の担い手の確保を進めるとともに、少ない人手でも従来と同じ量の仕事ができるよう生産性の向上を図ることが不可欠である。
国土交通省は、社会資本整備をはじめとする「現場」を全国にわたって擁しており、また、運輸業・建設業をはじめ経済活動のベースを支える幅広い「産業」分野を担当していることから、我が国の生産性向上などに向けて果たすべき役割は非常に大きい。こうしたことから、国土交通省では2016年3月に設置した「国土交通省生産性革命本部」(本部長:国土交通大臣)のもと、省を挙げて生産性向上などに向けた取組みを進めることとし、これまでに20の先進的なプロジェクト(生産性革命プロジェクト)を選定・推進してきている。生産性革命プロジェクトには一層厳しさを増す財政制約も踏まえ、「小さなインプットで、できるだけ大きなアウトプットを生み出す」観点から、1)新技術の開発や社会実装の推進、2)既存ストックの徹底的な活用、3)制度やその運用の見直しといった工夫が講じられているものを選定している。2017年は「生産性革命前進の年」として、これらのプロジェクトを着実に推進するとともに、新技術の積極的な活用といった生産性革命の基礎にある考え方を経済成長のみならず「安全・安心の確保」や「快適な生活空間の確保」といった国土交通行政の施策全般に浸透させていくこととしている(図表2-2-1)。