平成4年度 運輸白書

はじめに

はじめに


 通勤・通学、買い物、旅行等に代表されるように、日々の暮らしの中で人々が運輸サービスを利用しない日はないと言っても過言ではない。さらに、衣食住をはじめとする日常生活を支える物資の輸送においても、運輸サービスは不可欠な存在となっている。
 また、我が国経済が成長し、その規模や国民の所得水準が世界でも有数のレベルにまで達する中にあって、価値観の多様化が進むなど国民の意識やライフスタイルに変化が生じてきており、運輸サービスに対するニーズも高度化・多様化の度合いを強めている。そして、国民一人一人が真に豊かさを感じることのできるような生活を実現するための質の高い運輸サービスの提供が求められている。
 しかしながら、一方では、労働力不足や環境問題等運輸サービスをとりまく制約要因が顕在化しつつあり、高度化・多様化するサービスにはその内容に見合う適正なコスト負担が必要となっている。また、資源・エネルギーの節減やコスト負担の増加を抑制する観点から、利用者には、できる限り時期的、時間的な需要の平準化に協力したり、効率の良い鉄道等の大量輸送機関を活用するように努めるなど、運輸サービスの利用上手になることが求められているといえる。
 このような情勢の下で、我が国は豊かな生活の実現に向けて歩み始めたが、まだ現実には、経済全体の豊かさと豊かさに対する個人の実感との間にかい離がみられ、大都市圏における通勤・通学混雑問題に象徴されるように、運輸の分野においても今後取り組んでいかなければならない課題が数多く残されている。
 そこで、第1部では、豊かな生活の実現に向け、(1) 大都市圏におけるサラリーマン等の最も大きな不満の一つとなっている通勤・通学混雑の緩和、(2) 地域の活性化をもたらす地域間交流の促進、(3) 労働時間の短縮等を背景にニーズが高まりつつある自由時間の充実、(4) さまざまなニーズに対応した運輸サービスの高度化・多様化、(5) 真に豊かな国民生活の実現に不可欠な地球環境との調和という運輸の分野において力を入れて取り組むべき5項目のテーマを取り上げ、その現状とこれに対応した運輸政策の展開について述べることとする。