はじめに


 昭和62年4月に分割・民営化を柱とする国鉄改革が行われ、JR各社が発足したが、改革後今年度で10年目の節目を迎えた。
 国鉄改革は、破綻に瀕していた国鉄を交通市場の中での激しい競争に耐え得る事業体に変革し、国民生活充実のための重要な手段としての鉄道の役割と責任を十分に果たすことができるように国鉄事業を再生することを目的としたものであった。
 このような視点にたち、国鉄改革から10年を迎える現時点で、分割民営化後のJR各社による鉄道の事業経営の状況を振り返るとともに、残された課題が何であるのかを明らかにすることは、国鉄改革の意義を再認識する上で重要なことと考える。
 そこで今年度の運輸経済年次報告では、第1部において「国鉄改革10年目に当たって」をテーマとして取り上げた。まず、第1節では、国鉄の発足から国鉄改革に至るまでの国鉄が果たしてきた役割と、国鉄事業が悪化していった状況を概観した。次に第2節では、国鉄再建監理委員会の分割・民営化を柱とする「国鉄改革に関する意見」と昭和62年4月に実施された国鉄改革についてその概要を述べた。第3節では、分割・民営化により新しく発足したJRについて、輸送動向、経営状況、輸送サ−ビスの状況等について国鉄時代からどのように変わったかを比較し、分析した。第4節では、国鉄改革時に残された大きな課題である長期債務等の処理について、土地、株式等の資産処分のこれまでの取り組み状況を述べた。さらに第5節では、これまで行ってきた国鉄改革の評価を行ったうえ、今後の残された政策課題である長期債務等の本格的処理とJR北海道等とJR貨物の完全民営化に向けた取り組みについて述べた。