2 鉄道事業の変遷

〜国策事業から競争力を有する民営企業へ


 我が国の鉄道事業は明治5年の開始以降、その運営形態が民間資本の主導による事業の勃興から国有化施策による国有鉄道の誕生、そして国鉄の設立へと変遷し、やがて昭和62年の国鉄改革によって再び民営化されることとなった。
 このような変遷の過程は、国の産業政策、政治情勢等に大きく影響された結果であった。こうした中で国鉄は、我が国における全国的な鉄道路線網を建設し、基幹的な輸送機関としての役割を果たすとともに、戦争引揚者をはじめとする大規模な労働力の受け皿として、戦後復興と我が国の経済成長に大きく寄与してきたところである。
 しかし、その後のモータリゼーションの急速な進展等輸送構造の変化に適切に対応できなかったこと、また、国鉄事業は国の監督の下、運賃法定制により弾力的な運賃改定が行えなかったことなどから、国鉄の経営状況は、39年度に単年度赤字を計上して以来、悪化の一途をたどり、その経営は破綻に瀕するに至った。
 このような状況の中で、国鉄を交通市場の中で激しい競争に耐え得る事業体に変革し、鉄道事業を再生させるため、62年度に分割・民営化が断行されたのである。