1 鉄道整備の基本的方向


 21世紀に向けて、国土の均衡ある発展を図り、また、本格的な高齢化社会の到来を間近に控え、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、交通関係社会資本の充実・強化が重要となっている。特に鉄道はサービスの充実について、通勤・通学時の混雑緩和や都市間移動のスピードアップ、道路の混雑解消、環境負荷の小さい交通体系の構築の要請等の観点から国民の強い要望があり、これらを踏まえて幹線鉄道の高速化や都市鉄道の輸送力増強等を進めてきている。
 幹線鉄道については、整備新幹線をはじめとした高速鉄道ネットワークの整備・高度化が重要な課題となっており、全国主要幹線鉄道の表定速度の平均時速を120km台まで引き上げるとともに、鉄道特性のある分野について、東京、大阪、名古屋、福岡又は札幌から地方中核都市(人口20万人以上の都市及び県庁所在地の都市)までを、少なくとも、概ね3時間台で結ぶことを目標として、整備新幹線の整備、在来線と新幹線との直通運転化、スピードアップのための線形の改良、新型車両の開発等を推進していく必要がある。
 一方、都市鉄道については、通勤通学時の混雑緩和が重要な課題となっており、大都市圏におけるラッシュ時の混雑率を150%(東京圏については当面180%)にすることを目標として、新線建設、複々線化、列車の長編成化、列車本数の増加等による輸送力増強を進める必要がある。また、新しい住宅地の供給、通勤・通学時間の短縮等の観点からも、都市鉄道の整備が強く求められている。
 しかしながら、鉄道整備は、建設費の増大、用地確保の困難化等から、ますます膨大な資金と長期の懐妊期間を要するものとなっており、投資リスクも大きくなってきている。従って、鉄道事業者の投資促進のインセンティブとして、財政、政策金融、税制、運賃政策、地域社会の支援等について、あらゆる観点から検討を行い、国、地域社会、利用者等の関係者がそれぞれ必要な負担を行い、鉄道整備の推進のため一層努力していくことがますます重要となっている。