(ア) 交流空間の形成による地域の活性化


 運輸省では、港湾を快適な交流空間として活用していくための諸施策を推進している。
 まず、人々のウォーターフロントへの多様な要請に応え、港湾空間を海辺の持つ恵まれた資質を生かした交流空間としていくために、緑地、交流施設、賑わい施設などが相互に連携し、面的な広がりをもって一体的に配置された親しみやすく利用しやすい空間の整備を、港湾整備事業や民活事業等を組み合わせて効果的に推進することとしている。
 このうち緑地については、良好な港湾環境の形成と周辺の生活環境の保全や人々の交流の活発化を図るため、7年度までに全国で約2,300haの整備を実施しており、8年度には横浜港など全国165港で整備を実施している。特に整備を促進する必要がある再開発地区などの緑地については、運輸省と自治省が協調し、従来からの補助事業と地方単独事業(都市生活環境整備特別対策事業:一般単独事業債)を組み合わせた「港湾緑地一体整備促進事業」を8年度よりスタートさせ、長崎港など全国7港で約24haの整備を実施している。また、これら緑地の整備などを通じて、人々が港へ安全かつ快適に行き来でき、海や港の魅力を楽しむことのできるプロムナード(港のパブリックアクセス)の整備を推進している。
 このほか、歴史的に価値の高い港湾施設を保存・活用する「歴史的港湾環境創造事業」や、港湾の特色を活かして個性的で良好な景観形成を図る「港湾景観形成モデル事業」などを推進している。
 また、民活事業については、昭和61年の「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(民活法)」、昭和62年の「民間都市開発の推進に関する特別措置法(民都法)」の制定以来、釧路フィッシャーマンズワーフや大阪港の海遊館など全国で約120のプロジェクトが推進されており、活力と賑わいのある豊かなウォーターフロント空間の形成に寄与している。
 民活法については、平成8年5月までの時限立法であったことから、7年11月に適用期限を10年間延長するとともに、新たな対象施設として、水質環境の改善や廃熱等未利用エネルギーの有効利用により、快適な港湾環境を創造する施設(港湾環境創造支援施設)を追加するなどの支援の拡充を行った。8年には、塩釜港、平良港などにおいて地域の交流拠点となる旅客船ターミナルが供用を開始したほか、神戸港などにおいて港、船、海に関する会議、イベント等のための多目的ホール、展示・体験施設などを備えた港湾文化交流施設をはじめとする交流・賑わい施設の整備を推進している。
 さらに、多くの人々が利用するこれらの施設の整備にあたっては、安全性の確保はもとより、高齢者や障害者など社会的弱者の利用にも十分配慮することとしている。