2 新東京国際空港の建設


(1) 空港位置の決定

  新東京国際空港は,昭和45年頃と予想される現在の東京国際空港の行詰まりを打開するため,その建設が急がれているものである。当局としては,このような必要性に基づき,すでに数年前より空港計画の策定および候補地の調査を進めてきたが,今年ようやく千葉県成田市の三里塚を中心とする地区に空港位置の最終的な決定をみた。
  空港位置の決定をみるまでの経過について概略説明すると,つぎのとおりである。
  新室港の候補地については,37年度118万円,38年度1,000万円の調査費をもって,空中調査及び現地踏査による候補地の調査,検討を進めた。
  38年8月には,新空港問題の重要性にかんがみ,各界識者の意見を徴するため,運輸大臣より航空審議会に対して「新東京国際空港の候補地およびその規模」について諮問が発せられ,同年12月,新空港の候補地は,千葉県富里村付近が最も適当であり,その規模は,2,300ヘクタール程度が適当であるとの答申が出された。
  その後,新空港の候補地は,各界の注目を浴び,各種の議論が行なわれたが,39年10月に至り,新空港問題についての関係閣僚懇談会の初会合が行なわれ,行政各般についての意見調整が試みられた。しかし,事態は容易に進展しないまま40年3月に至り,関係閣僚懇談会は,埋立候補地の調査を中心とする今後の検討方針を決定し,これを受けて,4月1日の関係事務次官会議において,空域,渉外および土木技術の3小委員会が設置された。その後,関係各省庁それぞれ所管に応じて調査,検討を進めたが,調査の結果は11月にまとまり,霞ケ浦の埋立てによる空港の設置は,主として土木技術的な観点から不適当であるとの結論に達した。そこで,同年11月に開かれた関係閣僚懇談会において,その結果を了承し,残る候補地としての富里を新空港の位置として内定した。
  しかし,空港位置の内定後,地元情勢は急速に悪化し,周辺町村においても相ついで反対決議が行なわれた。
  一方,政府としては,41年3月の閣議において新空港に関する重要な問題を協議し,その推進を図るため,内閣に臨時新東京国際空港閣僚協議会を設置して,地元対策等の検討を進めてきた。
  しかし,このような措置にもかかわらず,一向に事態の改善はみられず,ここにおいて,政府としては,最後の方法として空港位置を千葉県成田市の三里塚を中心とする地区,すなわち,県有地を含み皇室用財産である下総御料牧場を中心とする区域に変更するとともに,この際買収すべき民有地を極力小範囲にとどめるため,新空港の規模を当初案の概ね半分にあたる1,060ヘクタール程度とし,あわせて,政府の責任において地元対策に万全を期することとして,7日の閣議において新空港の位置を正式に決定するに至った。

(2) 公団の設立

  国際空港の建設および管理は,従来,政府の直轄事業として実施してきたが,今回の新空港は,その重要性および緊急性に徴し,建設から管理段階に至るまで一貫した責任体制のもとに効率的な運営を行なうことのできる公団方式によることとした。公団設立の必要性は昭和40年度予算において認められ,同年度出資金5億円が計上された。
  公団の設立を定めた新東京国際空港公団法案は,40年の第48回通常国会に政府提案され,同年6月1日成立,同2日に公布された。しかし,この公団法は,その附則第1条に定めるところにより,公布と同時に施行されたの
 は,第2条,すなわち,新空港の位置は政令で定めるとする条文のみであり,その他の条文は政令による位置決定があるまで棚上げされていた。今回,7月4日,政令第240号により正式に位置決定がなされ,同7日付けで公団法は全面施行されることとなった。
  また,公団法の全面施行に伴い,当局としては,公団の設立準備を急ぎ,7月14日に第1回,同29日に第2回目の設立委員会を開き,同30日,公団法施行令を公布,施行,同日,施行令の附則による特殊法人登記令の改正規定に基づき設立登記を完了し,公団成立の運びとなった。
  公団の事業計画としては,新空港の規模は,前述の如く当初案より縮小し,総面積1,060ヘクタール,滑走路は主滑走路2本に横風用滑走路を含み3本とする予定である。その建設スケジュールは,46年度当初より供用開始となるよう建設を進める計画である。また,予算措置としては,昭和41年度において,10億円の政府出資及び15億円の財政融資が計上されているほか,公団債務負担行為限度額として20億円,合計45億円が予定されている。
  次に,公団の41年度の機構,定員については,役員は,総裁,副総裁,理事6人以内,監事2人以内となっており,公団組織として,企画室のほか総務経理,計画,用地,代替地造成および工務の6部,それに建設事務所が置かれるほか,職員は年度末において300名となっている。


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