5 今後の問題


  運輸省においては,船舶技術研究所を中心として油水分離器及び油分濃度計の研究開発を推進し,相当の成果を得てきたが,今後さらに油濁防止に関する次の事項について早急に研究を推進する必要があると考えられる。
  a.大量流出油の除去処理方法の研究
  b.油の排出防止のための有効な方法の研究
  c.船舶からの投棄物の油含有量の探知,測定及び記録装置の開発
  d.油濁が海中の動植物に及ぼす影響等
  また,最近,大きな社会問題となつているのは,トリー・キャニオン号事件にみられるような油送船の事故に伴う油の流出による被害である。油送船の事故による被害は,最近における海士交通のふくそう及び油送船の大型化に伴い,ますます増大する傾向にあるが,海運業者は,そのような事故の発生に対して十分な賠償能力を確保する必要がある。その要請に応じるものが船主責任保険である。現在,65総トン以上の鋼船については,日本船主責任相互保険組合がいわゆるP.I.保険事業を行なつており,船主が油により海水を汚濁させ海産物等に被害を与えた場合は,このP.I.保険により填補されることとなつているが,内航船の加入率はきわめて低い現状である。
  被害者の保護と内航海運企業の安定を図るためには,今後,保険制度のあり方等について検討を加え,内航船の責任保険への付保率の向上その他所要の措置を強力に進めてゆくことが必要である。


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