2 航空企業の経営基盤の強化について


  国内定期路線を運営する航空企業の経営基盤の強化に関しては,昭和40年12月に行なわれた航空審議会の答申で示された方針があり,同答申によれば,幹線運営企業は2社とし2社間の協調を図るとともに,ローカル線のみを運営する企業を幹線運営企業へ統合することが適当であるとされている。
  同答申後41年の相つぐ航空機事故の発生にかんがみ,航空の安全性と航空企業の適正な運営を確保するためには,企業の集約化により早急に経営基盤の強化を図る必要があると考え,石坂泰一,植村甲午郎の両氏に関係企業間のあつ旋について要請したところ,同年4月両氏から当面とるべき措置を中心とする意見書の提出があつた。
  政府としては,上記答申および意見書の趣旨を尊重して早急にこれが実現を図るべきものと考え,41年5月20日「航空企業の経営基盤の強化について」閣議了解を行ない,航空企業の集約化と協調化を強力に推進することとした。
  閣議了解の内容は,航空の安全性の確保その他航空事業の適正な運営を期するため,幹線においては,各企業の保有機数の増加抑制による需給調整,日本航空(株)と日本国内航空(株)との間における将来の合併を前提とした運営の一本化および日本航空(株)と全日本空輸(株)との間における営業,技術両面の運営の協調化の措置をとり,ローカル線においては,各企業の経営合理化の徹底とローカル線運営企業の幹線運営企業への統合促進のための措置をとるものとし,政府においても飛行場の改善整備,乗員養成施設の充実強化等の施策の強力な推進を図るというものである。
  運輸省では,この閣議了解に基づき,41年5月以降関係企業に対する指導をいつそう強化してこれらの措置の早期案現に努めているが,42年度において日本航空(株)と日本国内航空(株)との間で合併の合意および幹線運営の一体化が実現したのに引き続き,現在までのところ次のような措置が実現をみた。
  まず,長崎航空(株)は,前述のとおり42年11月をもつて定期航空運送事業部門を廃止し,同社が運営していたローカル線の一部は全日本空輸(株)が運営することとなつた。これにより従来4社あつたローカル線運営企業は3社となり,実質的に定期航空運送事業の部門における統合が行なわれた。
  また,日本航空(株)と全日本空輸(株)は,これまで幹線の便数調整を行なうなど過当競争の防止に努めてきたが,43年5月23日運賃プールに関する協定を締結し,4月1日にさかのぼつて実施することとした。これは両社の幹線旅客収入をいつたんプールしたうえ,これを両社の保有機数および競争力を勘案して定める比率によつて配分することを骨子とするもので,配分比率の決定にあたつては,両社の実績を前提としながらも全日本空輸(株)の力を徐々に日本航空(株)に近づけるよう考慮されており,過当競争を防止して航空の安全性の向上と業界の秩序ある発展を図ろうとするものである。運賃プール制の実施は,40年12月の航空審議会の答申においてもとりあげられている対策であり,これにより幹線運営の協調化はいつそう促進されることとなつた。
  そのほか,現在までに実現はみなかつたが,全日本空輸(株)と東亜航空(株)との間においても合併等の交渉が進められている。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る