3 過疎地域における自動車輸送問題


(1) 過疎地域における乗合バスの現状

  過疎地域とは,運輸省の離島辺地等乗合バス路線維持費補助金制度においては,離島,辺地および人口密度1平方キロメートル当り100人未満で,過去5年間の人口減少率5%以上の地域をさしている。このような過疎地域を運行するバス会社は,全バス会社のほぼ半数にものぼるが,そのうちの代表的な過疎バス会社20社を例にとつて輸送人員の推移を見ると,総論第2部 〔2−2−26図〕のとおりであり,昭和39年を境として全国の輸送人員がほぼ横ばいをたもつているのに対し,過疎バス会社についてはかなり大幅な減少を示し,その後もこの傾向が継続している。
  このように,過疎地域においては,バスの輸送需要が減少し,その結果,輸送収入が伸び悩んでいるのに加えて,人件費の増大によつて輸送費用が増加している。 〔I−(II)−43図〕は,先の20社について最近のキロ当り輸送費用の上昇の状況を全国平均と比較したものである。

  この結果,過疎地域のバス事業の経営状況は悪化している。たとえば42年度において先の20社中16社の乗合バス部門で合計4億6,000万円の営業欠損を出しているばかりか12社が資本金合計の1.3倍にあたる総額13億円の累積欠損をかかえ,企業自体の存立さえあやうくなつている。
  このように経営の悪化しているバス会社の運行する不採算路線は,企業の要請としては,廃止が望ましいとしても,バスは鉄道と異なり,過疎地域住民にとつてはいわば最後の公共輸送機関でありこれを維持する社会的要請もまた大きなものがある。

(2) 運行確保対策

  過疎地域の不採算路線の維持をはかるためには,第一次的にはコストに見合う収入を得るだけの運賃を設定することが必要である。しかし,最近においてはマイカーの普及によつて需要の弾力性が大きくなつたため,運賃の値上げもその上げ幅によつては輸送需要の減少に拍車をかけることとなり,運賃の改訂が直ちに所要の増収に結びつかず,旅客の逸走による旅客1人当り輸送コストの上昇という悪循環を招くおそれも出てきている。
  したがつて公共性の高い不採算路線についてはこれを積極的に助成することにより適正な運賃の下における路線の維持が可能となる。運輸省は,昭和41年度から離島辺地バス車両購入費補助金制度を導入し,さらに44年度からそれと併行して離島辺地等バス路線維持費補助金制度を設けた。前者は過疎地域における赤字の中小バス事業者に対し車両代替費の3分の1を補助する制度であり,43年度には18会社27両について22,902千円の補助金を交付し,44年度も同額の予算措置がなされている。また後者は,過疎地域の不採算系統を運行する赤字のバス事業者に対し,当該系統の償却前運行経費のうち人件費を控除した部分(おおむね燃料費および車両修繕費にあたる)の2分の1を国が,残りの2分の1を関係地方公共団体が補助する制度であり,44年度の国の予算額は47,801千円である。
  今後さらにこの助成を充実させることにより過疎地域の交通の確保に努める必要があるが,利用者のきわめて少ないバス路線については自家用車の共同使用等によつて代替させることも必要であり,これらの基本方策は,各地域の実情に沿つて地元住民と密接な連絡を保ちつつ,検討することになろう。


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