3 過密・過疎問題と交通


  近年における大都市圏への急激な人口の集中は通勤・通学輸送の逼迫,路面交通の著しい渋滞等の都市交通問題を惹起しているにとどまらず,交通公害といつた深刻な社会問題をもたらしている。
  大都市交通問題は単に輸送力の増強,円滑化のみならず,さらに社会的な見地からもその解決が迫られている。このため,大都市においては大量公共輸送機関である地下鉄・高速鉄道を中心にして路線網の整備,輸送力の増強が図られるとともに,路面交通ではバス優先レーンの設定等が行なわれ,効率的都市交通体系の整備が進められている。また,自動車に係る公害対策としては排出ガス規制の強化を中心にして施策が進められている。さらに新しい都市交通システムの開発も検討されている。
  一方,地方においては人口の著しい流出によりいわゆる過疎問題が発生しており,地方交通に大きな問題を投げかけている。過疎地域における輸送の問題は,人口の減少,モータリゼーシヨンの進展が輸送需要の減少にむすびつき,運輸企業経営上大きな支障をきたしていることである。
  過疎地域を運行する乗合バスの輸送人員は 〔1−1−23図〕に見るように,年々減少を続け,平均乗車人員も7.9人と全国平均19.6人の半分以下である。また,運行回数も1日2往復以下のものが65%を占めている。

  国鉄ローカル線と地方中小私鉄についても 〔1−1−24図〕, 〔1−1−25図〕に見るように近年の輸送需要の減少は著しい。
  過疎地域における交通問題は,単に運輸企業のみの問題としてでなく,地域社会における生活環境の維持,国土の均衡ある発展の観点に立つた地域開発の一環として検討する必要があり,運輸省においては地方陸運局に地方陸上交通審議会を設け,検討を進めている。また,中小私鉄に対しては,合理化に必要な資金を長期低利に融資するための努力をするとともに,合理化設備に対する補助を行ない,離島辺地のバス事業者に対しては,バス運行を確保するための従来の車両購入費補助制度のほか,44年度から新たに路線維持費補助制度を設ける等補助制度および補助対象地域の拡充強化を図つている。


表紙へ戻る 次へ進む