2 事故の原因


  昭和46年中の航空事故の原因としては,操縦者の操作の誤り,判断の不適切等人為的なものが多く,全事故の約62%を占めている。
  前述の「ばんだい号」事故の原因調査については,事故調査委員会が運輸省III-21表 民間航空機の事故発生状況に設置され,調査の慎重を期すとともに速やかに結論が得られるよう精力的な調査が進められている。
  全日空機,自衛隊機衝突事故の原因については,総理府に設置された事故調査委員会より昭和47年7月27日次のとおり発表された。
  第1の原因は,教官が訓練空域を逸脱してジエツトルートJllLの中に入つたことに気がつかず機動隊形の訓練飛行を続行したことである。
  このことは,教官が指揮した機動隊形の旋回訓練には,上下,左右,前後に非常に大きな飛行空間を必要とするものであるにもかかわらず,比較的狭い訓練空域で高々度において地文航法のみによつて訓練を行なつたため,正確な機位の確認ができができなかつたためと考えられる。
  第2の原因は
 (1) 全日空機操縦者にあつては,訓練機を少なくとも接触約7秒前から視認していたと推定されるが,フライト・データ・レコーダの接触前の記録に機体の反応が示されていなかつたことからみて接触直前まで回避操作が行なわれていなかつたことである。
  このことは,全日空機操縦者が訓練機と接触すると予測しなかつたためと考えられる。
 (2) 教官にあつては,訓練生が全日空機を視認する直前に訓練生に対し接触回避の指示を与えたが,訓練機の回避に間に合わなかつたことである。
  このことは,教官が全日空機を視認するのが遅れたためである。と考えられる。
 (3) 訓練生にあつては,接触約2秒前に自己機の右側やや下方に全日空機を視認し,直ちに回避操作を行なつたが,接触の回避に間に合わなかつたことである。
  このことは,訓練生が機動隊形の旋回飛行訓練に経験が浅く,主として教官機との関係位置を維持することに専心していて,全日空機を視認するのが遅れたためであると考えられる。
  また,日航機事故の原因調査は,インド政府で実施しているが,わが国からも積極的に参加し協力している。
  なお,事故調査機関については,航空事故の原因を究明するための調査を適確に行なう体制を確立するため,常設の事故調査機関を設置する必要があり,この趣旨にそつて航空事故調査委員会法案が第68回国会に提出され,現在継続審議中である。


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