2 航空交通管制業務の近代化


  航空輸送需要の増大に伴う航空機の大型化,高速化に対処するとともに,一般小型機,自衛隊機等運航特性の異なる機種の混在による多種多様にわたる空域利用上の要請に対処し,航空交通を安全かつ円滑に処理するためには,航空交通管制業務の一層の効率化と安全性の確保のため万全の対策を講じる必要がある。

(1) 特別管制空域の設定

  多種多様の航空機が混在する空域では,特に高速機の場合,単に操縦席からの警戒のみに頼る有視界飛行方式では,ニアミスや空中衝突回避に万全を期すことはできない。このためすべての航空機を計器飛行方式により航行させる特別管制空域を東京国際,大阪国際,仙台,名古屋,高松,福岡,宮崎,鹿児島,千歳及び三沢の10飛行場に設定し効果をあげている。
  50年度においては大阪国際空港に係る特別管制空域の拡大を行い,51年度においては広島空港及び長崎空港に係る特別管制空域の新設について引き続き検討を行うとともに,航空路の幹線ルート(東海特別管制区)にもこれを設定した。

(2) 航空交通規制(フロー・コントロール)

  航空交通の秩序ある流れと,航行の安全を確保するため,管制機関の単位時間当りの処理能力を超える交通を制限するフロー・コントロール方式を,44年8月から実施しており,また,東京及び大阪両国際空港については「空港ダイヤ調整基準委員会」を設けて,定期便のスケジュールを,その作成段階で調整し,同方式の強化を図っている。

(3) 管制情報処理システムの整備

  管制官の負担を軽減し,管制処理能力を向上させるため,電子計算機を導入した管制情報処理システムの整備を次のとおり実施している。
  航空路管制情報処理システムの整備は,フェーズIシステム(飛行計画情報処理システム〉とフェーズIIシステム(レーダー情報処理システム)とからなっている。
  フェーズIシステムは,既に東京航空交通管制部において運用中であるが,これを48年度を初年度とする4か年計画により,システムの規模を札幌,福岡及び那覇の3航空交通管制部も対象とする全国規模に拡大することとして整備を進めてきたところであり,50年度においては那覇に設置を完了した。また,福岡及び札幌については,51年度に設置する予定である。
  このシステムの完成によって,飛行計画を受理した後の運航票作成,位置通報点通過時刻の計算,統計データの集計等は,電子計算機を使用して効率的に行うことができるようになる。
  フェーズIIシステムは,48年度を初年度とする5か年計画により,札幌,東京,福岡及び那覇のすべての航空交通管制部に整備することしており,50年度においては,これらシステムの一部機器の製造及びプログラムの作成を行った。このシステムの完成によって,航空機の自動識別が行われるとともに,管制卓のレーダー表示装置上に航空機の便名,高度等管制に必要な飛行情報が表示されるほか,管制移管の手続きの簡素化が図られる。
  また,ターミナルにおける管制情報処理システム(ARTS-J)はフェーズIIシステムと同様に,レーダー情報を電子計算機により処理し,管制卓のレーダー表示装置上に管制に必要な飛行情報を表示させるシステムであり,50年度においては,東京国際空港についで大阪国際空港に設置し,東京国際空港については51年3月に,大阪国際空港については9月に業務を開始した。

(4) 遠隔対空通信施設の整備

  航空交通管制部が管轄空域内を飛行する航空機と直接交信し,管制承認,指示の伝達,位置通報の交信等を即時に行うため,現在,位置通報所等を経由して,間接的に交信している空域について,逐次,遠隔対空通信施設の整備を進めており,既に49年度までに,成田,枕崎等14か所に設置し,また50年度においては,新潟,清水及び上品山の3か所に設置した。

(5) 航空交通管制部庁舎の整備

  各航空交通管制部では,航空路管制システムの近代化を図るための必要な航空路監視レーダー及び管制情報処理システムを導入するため,レーダー表示装置,電子計算機をはじめ諸機器を設置する新たなスペースが必要となる。しかしながら,札幌,東京及び福岡の3航空交通管制部の現庁舎ではあまりにもきょうあいであるため,新庁舎の整備を進めてきており,東京及び福岡両航空交通管制部については50年度に完成したところであり,札幌航空交通管制部については51年度に整備が完了する予定である。


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