5 海洋法会議における海運問題


  海洋法会議において海運にとって重要な課題は,船舶の運航に関する沿岸国の管轄権拡大の要求に対していかに海運活動の自国を確保してゆくかという点にある。同会議では,領海,国際海峡,群島水域,排他的経済水域及び公海における船舶の通航制度,船舶起因の海洋汚染に対する沿岸国の立法権,取締権及びそれらの及ぶ領域等の問題を中心として,従来の制度の見直し,新たな制度の提案等を通じて各種の協議が行われ,領海における無害通航制度の確立等多くのコンセンサスが得られてきたが,一方,一部の問題については利害関係国の間でなお合意に至っていないものもある。
  第3次海洋法会議第5会期(51年8〜9月),第6会期(52年5〜7月)では非公式単一交渉草案改定版をベースに,海運関係では国際海峡における船舶の通航制度及び船舶起因の海洋汚染問題という2つの問題の討議が進められた。国際海峡における通航制度については,海峡の通航権を領海並みに制限しようとする海峡沿岸国の主張に対し,先進国,海運国は伝統的に認められてきた通航の自由をできる限り確保しようとしているが,特に国際海峡における法令違反の取締権限をいかにするかに関して議論がなされた。また,船舶起因の海洋汚染防止については,入港国,沿岸国,旗国の管轄権をどのように定めるかに関してそれぞれの主張がなされ審議が行われたが,なかでも外国船舶の構造,配乗基準に関し,領海内において沿岸国が国際基準に上乗せした立法をすることを認めるか否かの問題は,我が国としてもその円滑な国際海運活動が妨げられることとならないよう慎重に対処する必要がある。
  第6会期終了後これまでの協議等を考慮して作成された非公式統合交渉草案は,第7会期以降の審議のベースとなるものであるが,我が国としては今後とも積極的かつ慎重に審議に参加し,適切な海運活動の自由が確保されるよう努力する必要がある。


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