2 日本人海外旅行の課題


  近年,日本人海外旅行者の急激な増加に伴い旅行先の諸外国で種々の問題が発生している。52年中の海外邦人の事故は,交通事故,航空機事故,登山事故等による死傷199人,自殺12人,病死26人.精神異常40人,行方不明14人,海外で犯罪を犯した者84人等となっている。さらにこのような数字に現われたもののほかにも,多数の事故が発生しているものと思われる。
  こうしたことから,天災地変等不可抗力による事故は別として,海外旅行者に対し,日本の領域を一度離れたら危険な場所には絶対立寄らないこと,旅行先国の法令を遵守すること等について一層周知徹底を図る必要がある。
  また,日本人海外旅行者の増加につれて,日本人旅行者を受入れる国において日本人に対するイメージが形成されるとともに,日本人旅行者の態度,行動等について多くの評価がなされるようになってきた。その中には好意的なものばかりでなく批判的なものも多く,特に,東南アジア諸国の一部においては,現地のマスコミ等が日本人旅行者のマナー批判の記事を掲載するというような事態も生じている。
  その原因としては,日本人が海外旅行に不慣れであり,受入れ国の風俗,習慣,マナー等について十分熟知していないこと,団体旅行が多く,また旅行そのものが開放的,娯楽的であるため,旅の恥はかき捨て的な行為に走りがちであること,言語,風俗等が異なるため,受入れ国の人々とコミュニケーションが十分とれず,トラブルを生ずる場合があること等があげられる。
  このように日本人旅行音のマナー等に対しとかくの批判があり,その改善は国際間の相互理解を増進する上において重要な問題となっているため,国は,@ポスター,パンフレット等を通じて国民に対する海外旅行マナーの周知徹底,A旅行業者に対し,不健全な旅行に関与しないこと,添乗員に対する教育・研修を強化すること,旅行参加者に対し海外旅行のマナーを周知徹底すること等について指導監督すること等の施策を講じ健全化に努めている。


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