3 観光に関する国際協力の推進


(1) 世界観光機関への加盟

  我が国は,53年7月,観光の分野にけおる国際協力に応分の貢献を行うとともに我が国の観光政策の推進に資するため,世界観光機圏(WorId Tourism Organization,以下「WTO」という。本部マドリッド,加盟国は53年7月現在100か国)に加盟した。
  WTOは,その前身にあたる非政府機関である公的旅行機関国際同盟(IUOTO)から発展的に改組,設立された政府間機関であり,50年1月に発足した。WTOの根本自的は,経済的発展,国際間の理解,平和及び繁栄に寄与するため,並びに人種,性,言語又は宗教による差別なくすべての者の人権および基本的自由を普遍的に尊重し,遵守することに寄与するため,観光を振興し,発展させることである。この機関の主な事業としては,@観光の振興・開発,旅行の容易化,観光関係の調査・研究等の面における国際協力を行うこと,A多くの発展途上国にとって観光振興がその国の開発に重要な寄与をなし得る点に着目して,これらの国に対して観光分野での援助活動を実施すること等である。後者に関しては国際連合の開発援助専門機関である国際連合開発計画(UNDP)の実施機関として活動することとなっている。また,最近における具体的な活動内容をみると,@旅行者を保護するための国際的な法規制を確立するための検討,Aホテルの格付け基準の検討,B発展途上国に配慮した航空運賃問題の検討C観光関係業務従事者の職業訓練プログラムの推進,D観光開発のためのプロジェクトの監理,E統計調査活動の推進等,我が国にとっても関心の深い諸問題に取り組んでいる。
  我が国は,従来から国際観光の分野において重要な地位を占めてきたが,WTOへの加盟を機に,その活動に積極的に参加し,国際観光のより一層の振興を図ることとしている。

(2) 観光の分野における経済協力の現状

  我が国は,発展途上国にとって国際観光の振興が,外貨獲得の一手段として有効であり,かつ,雇用を増大させ,さらに他の産業にも波及効果がある点で,重要な課題であるとの認識の下に,52年度も発展途上国に対する技術協力及び資金協力を積極的に推し進めた。
  技術協力の面では,JICAにおいて2回にわたる観光セミナーの実施,ホテル関係個別研修の実施等を通じ,合計40名の研修員を発展途上国から受入れた。 また,タイ政府及びインドネシア政府の要請に基づき,タイについては,パタヤ地区観光開発計画調査,インドネシアについては,北部及び西部スマトラ観光開発計画調査を実施した。
  資金協力の面では,海外経済協力基金より発展途上国に対し,ホテル建設のために円借款を供与し,現在,建設を進めているほか,民間によりホテル等に対する直接投資が行われている。
  また,国際機関を通じての経済協力として,従来に引き続き,策南アジア貿易投資観光促進センター(SEAPCENTRE)の行う東南アジア5か国の観光促進のための活動に対して拠出金を分担して協力を行った。53年度には,従来の活動に加えて,常設展示場の新穀が予定されており,これに対しても,拠出金を分担して協力する予定である。


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