8 便宜置籍船と低性能船舶の問題


  船舶の登録に特別の要件を要しない国(便宜置籍国)に登録されている船舶,いわゆる便宜置籍船の船腹量は,増加する傾向にあり,1970年に約4,000万総トン(世界船腹量の約19%)であったものが,1978年には約1億1,000万総トン(同約28%)に達している。便宜置籍船の問題は,UNCTAD,IMCO等の国際的な場において諸々の観点から検討が行われているが,UNCTADにおいては,主として経済的観点から,旗国と船舶の間に「真正な関係」が欠如しているとの主張,発展途上国側からの自国の商船隊整備の阻害要因として働いているとの問題提起等を踏まえて検討が行われている。
  また,IMCOにおいては,便宜置籍船の中に低性能船舶(船体,機関,通信,救命及び消火用の機器等が関係条約に定められた基準以下であり,そのため航行,人命,財産の安全等の面で問題のある船舶,いわゆるサブスタンダード船)が多いといわれているところから,主として技術的側面からとらえ,海上人命安全条約等による規制措置が検討されている。従来,便宜置籍船問題は,低性能船舶に対する方策を強化することが必要であるという世界各国で一致した観点から検討が行われてきたが,一方ではこのような技術上の観点からの検討のみでは十分ではないとの意見があり,他方では世界海運において便宜置籍船が果たしている役割を認識し,その存在を一概に否定すべきでないという意見も強く,本問題に関する国際的な世論は一致していない状況にある。今後便宜置籍船の問題は,国際的に技術的,経済的両面から頻繁に取り上げられ,検討されることとなろう。


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