1 発生源対策


  発生源対策は,航空機の騒音をその発生源である航空機そのものの段階で極力低減させるもので,騒音問題の解決に根本的な役割を果たすものといえる。環境基準の目標年次の一つである58年頃までには,空港立地等諸条件の有利な空港では,発生源対策の強力な推進により,航空輸送量の増大にもかかわらず,騒音の及ぶ地域はかなり小さくなるものと予想している。

(1) 機材の改良

  50年10月に施行された航空法の一部を改正する法律により制度化された「騒音基準適合証明制度」はジェット機(低騒音化改修の困難なものを除く。)について,その騒音が一定の基準以下でなければ飛行を禁止することを内容とするものである。53年9月にはジェット機の騒音基準を強化する措置がとられた。
  低騒音大型機(いわゆるエアバス)は,従来の航空機と比較して輸送力が大であるにもかかわらず,騒音は逆に相当低く,我が国においても,国内幹線路線にB-747SR,L-1011,DC-10の導入が行われている。
  国内幹線空港で,最後までこれらエアバスの導入が遅れていた大阪国際空港においても,52年5月からB-747SR,L-1011が国内線に導入されたのに引き続き,53年4月から国際線についてもエアバスが導入されるなどエアバスの運航回数は順次増加し,54年1月からは1日平均100便のエアバスが就航するに至った。運輸省としては,環境基準の58年目標の達成に向けてエアバスによる在来機の置換えを一層促進していくこととし,54年8月,地方公共団体とも調整のうえ,58年頃までに概ね1日平均180便までニアバスの増便を図ることとした。このような発生源対策の強力な推進により,同空港周辺における航空機騒音の状況は大幅に改善されるものと予想している。
  また,在来機ジェット機のエンジンの低騒音化改修としては,B-727,B-737,DC-9の機材についてエンジン部分に吸音材を装着する方法が既に開発導入されており,国内航空会社の現有機については改修が完了している。現在のところ低騒音化改修技術の開発されていない機材についても改修の目途がつきしだいこれを実施させることとしている。

(2) 騒音軽減運航方式の推進

  離着陸時の騒音を軽減する運航方式の改良としては,現在,@人家を回避する経路を飛行させる経路指定,A人家の少ない方向への離発着をさせる優先滑走路方式,B急上昇方式,C脚及びフラップ下げ操作を遅らせるディレイドフラップ方式が既に実施されているが,このほか,D離陸し一定高度に達した後,エンジン推力を減少させ住居地域上空を低騒音で飛行し,通過後通常の推力に戻して上昇するカットバック方式が福岡空港においてB-727,B-737,DC-9を対象に実施されている。さらに,Eなるべく低空を飛行させないプロファイル降下方式の採用及びカットバック方式を実施する空港の拡大等が検討されている。
  53年5月に開港した新東京国際空港では,離陸においては急上昇方式,着陸においてはディレイドフラップ方式等が実施されている。
  東京国際空港においては,従来から実施してきた優先滑走路方式の内容を強化し,また内陸部の騒音軽減を図るため北側からの旋回進入経路を改善し,進入路指示灯の改良を行い,これを53年秋から供用開始している。

(3) 便数調整,時間規制等

  騒音軽減措置として,大阪国際空港においては,同空港が内陸部の市街地に位置していることを考慮して,47年7月から原則として午後10時から翌朝7時までの発着を禁止してきたが,さらに50年12月から国内線については午後9時以降に発着するダイヤを認めないこととした。現在,国際線についても,午後9時から翌朝7時までに発着するダイヤはなくなっている。また,同空港では,発着回数の制限枠を強化しており,52年10月から発着回数を1日370回(うちジェット機200回)以内としている。
  一方,東京国際空港においては,ジェット機の発着禁止時間帯を原則として午後11時から翌朝6時までとしている。これに加えて,47年4月以降午後10時から翌朝7時までのジェット機の発着を海上経由で行わせるとともに,51年4月以降はB滑走路からの離陸を午後9時から翌朝7時までの間原則として禁止している。
  なお,大阪国際空港及び東京国際空港とも,時間帯ごとに発藩回数の上限を定めている。
  新東京国際空港においては,時差のある各国間を運航する国際線がほとんどであるという事情を考慮して,航空機の発着禁止時間帯を午後11時ら翌朝6時までとしている。


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