5 国鉄特定地方交通線のバス等への転換


  (動き出した特定地方交通線の転換)
  近年におけるモータリゼーションの進展等に伴って,国鉄の地方交通線は年々輸送シェアが低下し,鉄道特性を発揮できない分野となってきている。なかでも,輸送量の著しく少ない線区については,国鉄再建の観点に加え,輸送需要に見合った効率的な輸送手段の整備という観点から,バス又は第三セクター等による民営鉄道への転換を図る必要がある。
  このような国鉄の地方交通線の整理については,日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(以下「国鉄再建法」という。)において,地方交通線のなかでも1日1キロ当たり輸送人員(輸送密度)が4,000人未満の線区についてバス輸送等に転換を図ることとしており,このうち,輸送密度2,000人未満の線区について60年度までに転換する予定である。このため,56年9月にまず第1次特定地方交通線40線が選定され,57年11月には第2次特定地方交通線33線の承認申請がなされている。現在のところ,第1次線のうち8線について,国鉄再建法の定めた手続きに従い国鉄の地方交通線からの転換が決まっている。
  (転換第1号は北海道の白糠線)
  その第1は北海道の白糠線であり,関係政府機関,国鉄及び地元で構成する同線の特定地方交通線対策協議会において,バスに転換することで合意し,58年10月22日をもって廃止された。転換第1号となったこの白糠線は,57年度において,輸送密度がわずか94人しかなく,収入100円を得るために3,000円以上の経費を要する全国1の赤字線であったが,沿線市町村が白糠町だけであったこと等もあり,比較的スムーズに協議が調ったものである。白糠線廃止後は,白糠町営のバスが運行されており,従来国鉄線で3往復であった運行回数がバスでは4往復となり,7駅の停車場が29か所のバス停に増えるなど,サービス面での改善が図られている。なお,円滑な転換を図るため,国鉄から白糠町に対し転換交付金を交付しており,バス車両の購入,バス停の整備,バス運営基金の設置等に充当されている 〔1−6−7表〕

  (岩手県では第三セクター)
  その第2は岩手県の久慈,宮古,盛の3線であるが,これについては,日本鉄道建設公団の建設線を合わせて,第三セクター(地元出資による三陸鉄道株式会社)が地方鉄道として運営することで合意されている。これにより,三陸沿岸を初めて鉄道が縦貫することとなり,沿線地域の有機的結合の実現が期待されている。
  現在,日本鉄道建設公団が新線部分の建設を進めており,この完成を待って59年4月には営業を開始する予定である。営業開始後は,ラッシュ時以外ワンマン運転とするなど効率化した経営体制の下に,運行回数を現行に比べ2倍程度確保する計画となっている。また,鉄道車両,駅等の整備については,同じく国鉄から転換交付金が交付されることとなっている。
  なお,これら国鉄からの転換交付金については,国からの助成措置が講じられることとなっている。
  このほか,新潟県の赤谷線及び魚沼線がバス輸送に転換することで,また岐阜県の神岡線及び樽見線が第三セクターによる地方鉄道としての運営に転換することで,それぞれ協議会において意見の一致をみており,現在,具体的な実行計画を策定中である。


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