2 引越し輸送


(1) 引越し輸送の現状

  (成長する引越し輸送)
  宅配便と同様に,一般消費者が利用する輸送サービスとして,近年トラックによる引越し輸送の成長が著しい。
  生活水準の高度化に伴い,家具,家財の大型化,高級化により引越しにおける運搬にもかなりの労力と技術が必要となったこと,引越しに伴う荷造り等の作業を回避するケースが増加している一方,運送事業者の側においても,引越し輸送市場の成長性に着目し,引越し輸送部門の拡充,付帯サービスの充実,スーパー等との提携によるあっ旋網の拡充等を行う事業者が増加しており,引越し輸送を専業とする事業者も現われている。
  最近の引越し輸送に伴う付帯サービスの具体的内容を見ると,梱包,荷役,開梱等の基本的な付帯サービスにとどまらず,不用品の廃棄処分,冷暖房機器,テレビアンテナ等の取付け・取外し,引越し先の本格的な清掃,家具の防虫消毒,家具・インテリア用品のあっ旋等多様なサービスに及んでおり,引越し輸送が多様化する消費者ニーズに対応してサービスの充実を図ることにより成長してきたことを示している。

(2) 引越し輸送の問題点とその対策

  (期待される利用者利便の向上)
  しかしながら,引越し輸送についても,その成長に伴って,荷物の紛失,破損,延着,作業員の接客態度等の問題に加え,特に引越し輸送に係る問題として次のような点が指摘されている。
  @ 引越し輸送に係る附帯サービスについては,実費を収受することとされているが,家財の種類及び量,梱包や荷役を利用者が自ら行う程度等により付帯サービスのコストが異なるため,利用者が請求される料金にも差が生じることが多く,これがトラブルの原因となっている。
  A 引越し輸送においては,その形態がさまざまであるので,運送の準備行為として下見を行い,費用の見積りを行うのが通例であるが,見積りの内容自体が利用者に分かりにくいものとなっていることに加え,見積り料金の収受,精算額が見積り額を上回った場合の措置等をめぐってのトラブルが多い。また,契約解除の場合のキャンセル料についてもトラブルの原因となることがある。
  このような問題の解決に資するため,社団法人全日本トラック協会においては,運輸省の指導の下に検討を行ったが,58年1月,見積書の標準的な様式の作成と普及,料金の実費項目の一般消費者への周知徹底,業界の苦情処理体制の確立等を主な内容とする提言を行った。
  このような施策の充実により,引越し輸送における利用者の利便の一層の向上が期待される。


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