1 運輸技術開発への要請


 (多様化する技術開発への要請)
  運輸技術に関連する行政は,海運,造船,港湾,航空,自動車,鉄道,気象,水路等広範な分野にわたるぽかりでなく,その公共的な性格からも経営の効率化,利便の向上,施設建設の低コスト化,省エネルギー,安全の確保,公害の防止等広範な社会的要請を受けている。さらにその要請は,経済社会環境や国民の意識,価値観の変化と相まってますます高度化,多様化する傾向にある。これら幅広い社会的要請に応えて運輸行政を円滑に進めていくためには,その裏付けとなる技術について,国が必要な技術開発を進めるとともに,関係者の技術レベルの向上を図り,社会の進歩に即応してそれを生かしていくことが必要である。
 (国際技術協力の要請)
  運輸分野の活動は国際的な広がりの中で行われており,世界有数の工業国になった我が国に対しては,例えば,国際的技術基準を作成する場合においても大きな役割が期待されており,また,技術開発そのものについても,それぞれの国の運輸関連インフラストラクチャーの技術については,先進国,開発途上国双方から共同研究や技術援助等の国際協力に期待が寄せられている。このような期待に応えるためにも国際的視野に立った研究開発が必要となってきている。
 (共同研究の推進)
  このような背景のもとに運輸の技術を振興し,運輸システムを効率的に開発していくためには,関係者が一体となって共同研究を進めていくことが重要である。多分野の技術を総合して研究を進めるものとしては,運輸省の複数の研究所が産学の協力を得て進めている「野島崎沖の異常海難防止システムの研究」,運輸省,郵政省,科学技術庁(宇宙開発事業団)の共同研究である「航行援助衛星技術の研究開発」,また,産学官の共同研究として「高信頼度知能化船の研究開発」並びに「地下鉄の低コスト化に関する研究開発」等がある。


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