2 国鉄改革に関する政府の対応


(1) 推進体制の整備

  既に60年4月には,日本電信電話公社及び日本専売公社の民営化が実施され,3公社のうち残る国鉄の改革は,行政改革の残された課題として,国政の最重要課題の一つとなっている。このような状況にもかんがみ,政府は,再建監理委員会の「意見」の提出を受けて,7月30日の閣議において,この「意見」を最大限に尊重し,国鉄改革のための措置について速やかに成案を得て,所要の施策を実施するものとする旨の対処方針を決定した。そして同時に,「意見」で示された改革を推進するために次のような体制を整備し,具体的な検討に着手することとなった。
  まず内閣においては,国鉄改革を推進するに当たり,重要な施策等について協議・調整を行うための「国鉄改革に関する関係閣僚会議」を設置し,内閣総理大臣の主宰の下で,政府全体として取り組んでいく体制が整備された。また,国鉄余剰人員問題について,総合的かつ円滑な雇用対策の実施を図るため,内閣総理大臣を本部長とする「国鉄余剰人員雇用対策本部」を置き,専属の事務局を設置し,精力的に検討を進めている。
  さらに,国鉄事業を所管する運輸省においては,既に60年4月から省内に国有鉄道再建実施対策室を発足させ準備に当たっていたが,「意見」の提出を受け,国鉄改革の具体的推進を図るため,新たに運輸大臣を本部長とする「国鉄改革推進本部」を設置し,具体的な検討を開始した。
  労働省においては,国鉄余剰人員の再就職の促進等の雇用安定対策を推進するため,労働大臣を本部長とする「国鉄余剰人員対策推進本部」を設置し,鋭意検討を進めている。
  また,当事者である国鉄には国鉄改革の具体的実施を図るため,国鉄総裁を本部長とする「再建実施推進本部」及び「余剰人員対策推進本部」が設置されている 〔2−2−2図〕

(2) 具体案の検討

  このような体制の下で現在国鉄改革の具体策について詰めの作業が行われている。前述の対処方針に基づいて国鉄改革の実施を図ることとして,10月11日,政府は「国鉄改革のための基本的方針」を閣議決定した。この中で効率的な経営形態の確立,要員合理化及び余剰人員対策,長期債務等の処理など各般にわたる分割・民営化施策についてその推進のための指針が定められるとともに,新経営形態への移行時期を62年4月1日とし,所要の法律案を次期通常国会に提出することが決定された。今後はこの基本的方針に沿って,各種施策の具体的あり方を詰め,国鉄改革を実現するための基本的な法律を制定するとともに,百数十本にも上る関連する法律の規定の整備の準備作業を進めていくことが必要である。
  また,それと並行して資産・債務の承継のための各事業体への振り分け,新事業体の事業計画の策定,ダイヤ・運賃の設定,企業会計制度の導入,職員の所属の決定など新事業体の発足に関し実務的に必要な事項についても検討していくこととしている。
  さらに,経営形態変更の前提となる余剰人員対策及び長期債務等の処理のための財源・措置についても,できるだけ早期に具体的施策を策定する必要がある。
  このように解決すべき問題は多いが,一日も早く,経営のひっ迫した国鉄の事業の再生を果たすことが後の世代のために是非とも必要であるとの認識の下に,政府全体として総力を結集して具体化に取り組んでいる。


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