2 基幹空港の整備


(1) 関西国際空港の整備

 ア 関西国際空港建設の進捗状況

     現在の大阪国際空港は,我が国の国際及び国内航空ネットワーク

     の2大拠点の一つを形成しているにもかかわらず,環境対策上の配慮から離着陸回数の制限等多くの制約を受けているため,我が国の航空輸送の面で同空港は大きなボトルネックとなっている。また,我が国には,いまだ本格的な24時間運用可能な国際空港が整備されていないため,我が国の国際航空の発展にも大きな支障が生じている。
      このような状況に適切に対応し,大阪国際空港の環境問題の抜本的な解決にも資するため,関西国際空港の早期実現が望まれている。
      このため59年10月,関西国際空港株式会社を設立し,同社は,難航していた空港建設に伴う大阪府漁連,兵庫県漁連及び和歌山県漁連との漁業補償等について解決し,また,大阪府環境影響評価要綱に基づく環境アセスメント手続を終えた。さらに,61年7月には,公有水面埋立免許願書を大阪府知事に,飛行場設置許可申請書を運輸大臣にそれぞれ提出したが,今後,これらの手続等の完了を待って,できるだけ早期に着工することとしている。

 イ 関西国際空港計画の概要

      関西国際空港は,大阪湾南東部の泉州沖の海上(陸岸からの距離約5キロメートルの沖合)に設置する。また,本空港は全体構想を踏まえ段階的に整備を図ることとし,第1期計画の規模は,3,500メートルの滑走路1本,面積は約500ヘクタールとしている。能力は,年間離着陸回数16万回,開港は,67年度末を目途としている。また,建設工事費は,合計約8,000億円(事業費約1兆円)(58年度価格)と見込まれている。
      なお,関西国際空港の全体構想は,4,000メートルの主滑走路2本,3,400メートルの補助滑走路1本,面積約1,200ヘクタール,年間離着陸回数26万回となっている。

 ウ 関西国際空港関連施設の整備

      関西国際空港の立地に伴い必要となる道路,鉄道等の関連施設整備については,60年12月の関西国際空港関係閣僚会議において決定された関西国際空港関連施設整備大綱に基づき,関係省庁,関係地方公共団体等と十分連絡・調整を図り,空港建設の進捗状況に対応して計画的に関連施設の整備を進めることとしている。

 工 今後の進め方

      着工後,空港島護岸・埋立工事及び空港連絡橋の建設を鋭意進め,埋立工事が半ば終了した段階で滑走路等の空港諸施設の整備に着手し,67年度末に開港する予定であるが,関西国際空港の建設及び運営に際しては,民間活力を導入するとともに,空港と地域社会との調和を図るため,民間の創意工夫の活用,環境保全等に十分留意し,併せて関係地方公共団体等地元の理解と協力を得る必要がある。

(2) 新東京国際空港の早期完成

 ア 現況

      新東京国際空港は,53年5月に当初計画(滑走路3本,面績1,065ヘクタール)の半分の用地に4,000メートル滑走路及びこれに付帯する施設で開港し,以来8年を経た。この間の空港運営は順調に推移し,60年度には我が国国際航空旅客数の約3分の2に当たる1,172万人の旅客が利用し,我が国国際航空貨物量の約8割に当たる76万7千トンの貨物が輸送されている。特に貨物については国民生活に密着した生鮮食料品も多く輸入されており,海港を含めた港別輸入額では千葉港を抜き日本第1位の貿易港になっている等我が国の表玄関としての役割を果たしている。また,新東京国際空港は利用旅客数の16.4%が通過客であり取扱貨物量の38.7%が空港で積み替えられている等,アジアのゲートウェイとしての機能も果たしており,さらに国際航空の利用客数では世界第8位,取扱貨物量は世界第2位である等国際航空路の一大拠点として定着している。

 イ 早期完成の必要性

      新東京国際空港の現用施設は相当の混雑を呈しており,特に旅客ターミナルビルについては既に容量をオーバーし,滑走路等についても早晩その能力の限界に達するものと見込まれている。現在,新東京国際空港には34か国40社の定期航空会社が乗り入れており,さらに38か国から新たな乗り入れ希望があるが,現用施設のままでは今後の乗り入れは制限せざるを得なくなり,新たな国際摩擦を引き起こしかねない状況となっている。
      また,新東京国際空港は,世界の主要空港としては他に例をみない一本の滑走路で運営されており,規模的にも世界の主要空港の半分以下に過ぎない 〔3−3−2表〕。最近,東南アジア諸国のなかでも,滑走路3本を持ち,現在の新東京国際空港と比べて空港総面積で3倍以上(1,663ヘクタール)のチャンギ国際空港(シンガポール)のような大規模な国際空港建設の動きが活発化しており,このままでは新東京国際空港は国際航空路から取り残されかねない。
      このため,今後も増大する航空需要に対応するとともに安全性,定時性の確保を図るため,できるだけ早期に当初計画に従い空港を完成させることが必要であり,工事期間に概ね5年を要することを考えると,一日も早く工事に若手する必要がある。

 ウ 地元情勢

      空港により大きな雇用の場が確保されたばかりでなく,空港の特性を生かした先端産業の導入を空港周辺に計画する等新東京国際空港は,いまやその周辺地域にとって不可欠な存在として地元に定着している。また,千葉県議会,周辺市町村の議会から二期工事促進決議が相次いで出されたように,空港の早期完成に関する地元の協力気運は盛り上がっている。
     一方,空港周辺には依然として空港建設に反対するいわゆる過激派が集団で常駐しており,運輸省,千葉県,空港公団の職員宅への放火等過激なゲリラ活動を繰り返しているため,過激派の暴力排除の声が高まっている。

 エ 当面の課題

 (ア) 未買収用地の取得

      現在,未買収用地は全体の2%,農家は8戸となり,千葉県,成田市等の協力を得て引き続き話し合いによる取得に向け努めている。

 (イ) 早期完成のための世論の形成

      空港の早期完成のためには,成田空港問題に関する国民の深い理解と協力を得ることが必要であるので,空港の早期完成の必要性について世論に訴えている。

 (ウ) 保安警備対策の強化

      建設工事を推進するに当たっては,いわゆる過激派の違法な妨害活動から現空港の安全な運営を確保することが前提となるため,民間警備員の増強,機械警備の充実等新東京国際空港公団の自主警備の強化等保安警備対策の強化に努めている。

(3) 東京国際空港の沖合展開事業の推進

 ア 事業の経緯

      東京国際空港は,国内航空交通の中心として全国34空港との間に1日約420便のネットワークが形成され,年間約2,700万人の人々が利用している。本空港の離着陸処理能力は,46年頃よりその限界に達し,53年5月に成田空港が開港したことにより,しばらくの間若干の余裕が生じたが,その後の増便等により今や再び処理能力の限界にきている。
      本事業は,首都圏における国内航空交通の中心としての機能を将来にわたって確保するとともに,懸案であった航空機騒音問題の抜本的解消を図るため,東京都が実施している羽田沖廃棄物埋立地を活用し,現空港を沖合に展開するものである。
      運輸省では,58年2月,東京国際空港整備基本計画を決定し,その後,航空法に基づく飛行場の施設変更の手続き,東京都条例に準じた環境影響評価の手続きを経て59年1月に工事に着手した。

 イ 計画の概要

      本計画は,東京都の廃棄物処理場を有効利用し,3本の滑走路を設ける等空港施設を拡大し能力増を図るものであり,事業の完成により,滑走路処理能力は現行の年間16万回が23万回に増強される。
      空港へのアクセスとしては,鉄道については東京モノレールが新ターミナルまで延伸する計画であり,将来的には京浜急行の乗り入れも計画されている。道路については,建設中の湾岸道路との取付け,環状8号線の延伸を行う予定である 〔3−3−3図〕

 ウ 事業の推進状況と今後の見通し

      本事業は,用地を造成する廃棄物埋立事業,東京湾岸道路等の道路事業及び東京モノレール等の鉄道整備事業との整合性を取りつつ

     進める必要があり,全体の工程を次の3期に分けて行うこととしている。
     [第1期] 新A滑走路の供用
     [第2期] 西側ターミナルの供用
     [第3期] 新B滑走路,新C滑走路及び東側ターミナルの供用
      このうち,第1期については,63年7月の供用開始を目途として,用地造成等,所要の工事を順調に実施しているところであり,現状の2本の滑走路に加え,新A滑走路及び関係保安施設を整備することにより,滑走路処理能力を年間2万回程度増大することができる。
      また,61年度より本事業を対象として,空港整備特別会計に財政投融資資金の導入が認められた。


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