第2章 新しい鉄道の誕生

 ○ 国鉄改革により4月に発足した旅客鉄道株式会社等は輸送の安全性を確保しつつ,ダイヤ改善,各種企画商品の開発,業務運営の効率化を推進しており,4月から9月までの旅客鉄道株式会社の取扱収入が対前年同期比で5.2%増加するなど,おおむね順調なスタートを切った。
 ○ 長期債務等の処理日本国有鉄道清算事業団職員の再就職対策は,今後とも着実に推進していく。
 第2章の要旨
 1. 昭和62年4月1日に発足した6つの旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社は,国鉄改革のねらいを着実に実現しつつある。
  第1に各社は適切な経営管理,地域密着の事業展開を図りつつ健全で活力ある事業運営を続けていくために,輸送需要の維持・確保,営業活動の充実強化,業務運営の効率化及び経費の節減並びに関連事業の開発及び展開等を行うことにより,経営基盤の強化に努めている。
  第2に各社は輸送機関としての基本的な使命を果たすべく安全確保に努めている。
  第3に利用者の立場に立った良好なサービスの提供を行うため,サービス向上及び輸送施設の改善に日々努力している。
  第4に社員の意識の向上を図るため,CI活動等を通じて,社員一人一人の意識改革が図られている。
  以上の他,各社は良好な企業イメージの醸成,輸送サービス,収益力の向上に資する鉄道施設整備の推進等の努力も行っており,その成果については,即断することは難しいとしても,取扱収入等を見る限りおおむね順調に推移してきているといえる。
  しかし,地方交通線対策,バス事業の経営の分離等の問題が国鉄改革後もなお新会社に残されており,各社は,これらの問題の解決にも積極的に取り組んでいく必要がある。
 2. 国鉄改革で残された長期債務等の処理と再就職対策は,日本国有鉄道清算事業団が担うこととなっている。
 (1) 長期債務等の最終的な処理方策は,自主財源を充ててもなお残るものについては,最終的には国において処理することとし,本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置については,国全体の歳入・歳出の見直しと併せて検討,決定する。
  長期債務等の処理のための主要な自主財源である用地の処分については原則として一般競争入札の方法によるが,地価対策にも配慮し,適切な対応をとることとする。
 (2) 再就職対策については順調に対策が進み,62年4月1日現在で再就職先未定職員は7,630人となった。その後の承継法人の追加採用等により再就職先未定の職員数は,11月1日現在で5,430人と減少してきているものの,その多くは雇用情勢の厳しい北海道及び九州地域に集中している。今後は,広域再就職の促進を図る措置を含め,きめ細かな対策を講じていく必要かある。
 3. 政府・運輸省は今後とも,新会社の健全経営の安定化のための施策を講じていくとともに,長期債務等の処理問題等についても適時適切に対処していく所存である。


第1節 JR事業の新しい展開

第2節 国鉄からJRへ

第3節 国鉄改革を成功させるために