第9章 改善の兆しみえる運輸経済―昭和61年度の概況―

 ○ 国内旅客(人キロ)は,対前年度比2.0%増であり,このなかで航空が60年の日航機事故による低迷状態から着実に回復しつつある。
 ○ 国内貨物輸送(トンキロ)は,前年度に引き続き横ばいであった。また,分担率において自動車が内航海運を上回った。
 ○ 61年の出国日本人数は11.5%増の552万人と5年連続の史上最高を記録したが,一方,入国外客数は11.4%減となった。
 ○ 国際貨物(トン)の輸出をみると,海運は7.4%減,航空は1.5%減となり,一方,輸入では,海運が0.4%減,'航空が35.2%増となった。
 第9章の要旨
  昭和61年度の運輸経済は,輸送活動では旅客は増加,貨物は横ばいと二面性の傾向が持続し,外航海運,造船業等を除き,経営状況はばらつきあるものの改善の兆しをみせる業種が多くなった。
 1. 国内旅客(人キロ)は,対前年度比2.0%増で前年度の伸び率を下回ったが,このなかで航空が60年の日航機事故による低迷状態から着実に回復しつつあることが注目される。
  一方,国内貨物(トンキロ)は,対前年度比0.2%増とほぼ横ばいであるが,このなかで営業用自動車及び航空が増加率を伸ばす一方,鉄道の減少率が大きくなり内航海運についても停滞する等輸送機関別の明暗が顕著になったこと,分担率(トンキロ)において自動車が内航海運を上回りたことが特徴といえる。
 2. 61年の出国日本人数は対前年比11.5%増の552万人と大幅に増加し,5年連続史上最高を記録したが,入国外客数は同11,4%減の206万人となった。
  国際貨物(トン)をみると,海運は輸出が急激な円高の進展により対前年比7.4%減と前年に引き続き減少し,輸入は国内の素材型関連産業の低迷を反映し,同心0.4%減となった。航空は輸出が対前年度比1.5%減と減少に転じたが、輸入は同35.2%と大幅に伸びた。
 3. 61年度総合輸送活動指数(各輸送機関の輸送量をそれぞれの付加極値のウェイトによって総合化したもの)は,前年度の伸び率を下回ったものの対前年度比3.5%増と経済の動向を反映したものとなっている。
 4. 運輸事業の61年度の経常収支率の動向をみると,我が国経済の拡大の足どりが緩やかとなるなかで,外航海運,造船業で落ち込みをみせたが,ばらつきはあるものの改善の兆しをみせる業種が多くなった。航空運送は上述のとおり,日航機事故の低迷から画復しつつあり,再び上昇に転じた。
  なお,運輸省関連民間事業の設備投資は,工事ベースで1兆6,019億円で対前年度比1.5%増と3年連続の増加をみせた。
  昭和61年度の運輸経済は,我が国経済が円高の進展等の影響により実質経済成長率が2.6%にとどまるなかで,輸送活動については旅客は増加,貨物は横ばいと二面性の傾向が持続した。また,外航海運,造船業等を除き,経営状況はばらつきあるものの改善の兆しをみせる業種が多くなった。


第1節 輸送動向

第2節 施設整備

第3節 事業経営


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