5 物流事業規制の見直し


(1) 物流事業規制の見直しの必要性

 (物流ニーズの変化に対応した規制の見直し)
  経済構造が重厚長大型から軽薄短小型へ転換し,経済のソフト化が進む中で,国民生活の向上,産業界の流通に対する関心の高まりから,物流に対するニーズも小口化,多頻度化,スピード化するなど高度化,多様化の傾向にある。物流事業においては,このような産業・消費構造の転換と,これに伴い変化する物流ニーズに柔軟に対応することが課題となっている。
  運輸省では,このような物流ニーズの変化に対応して物流事業の活動が柔軟的確に行われるとともに,各輸送機関を通じて効率的な物流システムが形成されるよう従来より各般の物流政策を積極的に推進してきているが,その一環として,特に物流の中核をなすトラック事業及び新しい時代のニーズに応ずる複合一貫輸送の規制制度について,これらの観点から見直しを行うこととしている。
  他方,60年7月の旧行革審答申では,@トラックの事業区分等規制の見直しA複合一貫輸送を促進する方向での規制の見直しが中期的課題として指摘されている。

(2) 運輸政策審議会物流部会及び新行革審での審議状況

 (運輸政策審議会物流部会における審議)
  本年5月,運輸政策審議会物流部会(部会長 宇野政雄早稲田大学教授)に,トラック事業委員会(委員長 同左),複合一貫輸送委員会(委員長 谷川久成蹊大学教授)の2委員会が設置され,それぞれ「トラック事業の望ましい在り方を実現するための環境整備方策」及び「国際,国内を通じた複合一貫輸送の促進方策」について調査審議が進められている。これらのうち事業規制の在り方については,同部会において,10月25日に両委員会からの報告を受けて「トラック事業者及び複合一貫輸送に係る事業規制の在り方に関する意見」が次のとおりとりまとめられたところである。
  なお,同部会では,両委員会において,引き続き中小トラック事業者の活性化対策,複合一貫輸送に適合した運賃・約款の在り方等事業規制以外の問題を中心に調査審議を進めることとされている。

 (ア) トラック事業規制の在り方

      民間事業者の創意工夫を活かした事業活動を推進し,輸送の安全を阻害する行為を防止するとともに,中小トラック事業者の円滑かつ安定的な事業遂行に配慮して,以下を改革の基本的方向とする。
     (a) 参入基準 需給調整規定を廃止し,免許制を許可制に改める。
      著しい過当競争状況と認められる場合には,緊急措置として,期間,地域を限って新規参入の停止措置を講ずる。
     (b) 事業区分 積合と貸切による区分を廃止し,路線と区域の区分を統合する。
      従来の長距離路線事業は,広域積合運送事業(仮称)として,特に信頼性,確実性等利用者保護を重視した審査を行う。
     (c) 運賃規制 認可制を事前届出制に改め,不適当なものに対しては変更命令による是正措置を講ずる。
      必要に応じ,運輸大臣は,標準運賃・料金を定めることとし,これを民間団体に代行させることができることとする。
     (d) 社会的規制 運行管理者の資格要件の強化及びその地位の向上を図る。
      過労運転等重要な社会的規制の違法行為に対する行政処分を厳正に運用する。
     (e) 事業の適正化の確保 違法行為の調査,是正指導等の事業を行う民間団体を指定して,民間による自主的な活動を促進する。
     (f) その他 許可基準等は可能な限り明確化する。

 (イ) 複合一貫輸送促進に係る事業規制の在り方

      各種の物流ニーズに対して,専門化・多様化する物流サービスを適切に結びつける運送取扱事業の活性化を図るとともに,複合一貫輸送の促進を図るため,以下を改革の基本的方向とする。

 (a) 運送取扱事業について横断的,総合的制度の創設

      運送取扱事業について,事業法ごとの縦割りの制度を改め,一元的な制度に整理する。
      利用運送事業は許可制,その他の運送取扱事業は登録制とする。
      これに伴い通運事業法を廃止する。
      運賃・料金については事前届出制とし,不適当なものに対しては変更命令による是正措置を講ずる。

 (b) 複合一貫輸送について制度的位置付け

      事業者の活力を活かすとともに事業の健全な発展を推進するため,任意の認定制度の導入等を行い,責任の明確化,利用者利便の確保等について制度化を検討する。

 (c) その他

      許可基準等は可能な限り明確化する。
     (新行革審における審議)
      62年4月に発足した新行革審において,63年1月より,流通,物流,情報・通信,金融等に関する公的規制のあり方について検討が行われ,12月1日に「公的規制の緩和等に関する答申」がとりまとめられたところであるが,このうち物流関係については,運輸政策審議会物流部会の意見の基本的考え方を改革方策の骨子として示したものとなっている。

(3) 今後の方向

  運輸省では,この運輸政策審議会物流部会の意見及び新行革審の答申を踏まえ,関係者とも十分な調整を図りつつ,所要の立法措置を講ずることとしている。


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